「F・A氏の言語生活」 国文学科3年 中村知子 |
調査日 2004年1月6日 調査者 中村知子 西山紘大 外住歴 なし 現在のご職業 自営業 かつてのご職業 農業・会社員 |
■調査
Fさんはとても協力的な方で、こちらの質問にも一つ一つ事細かに答えて下さいました。私の印象では喋りもはきはきとして早口で、「短けぇ」「イテエ(痛い)」「見るってーと」(連母音の長音化)や「アサシシンブン(朝日新聞)」(「ヒ」を「シ」で発音する)など下町的な話し方をされる方だと思ったのですが、ご本人は自分のことばは下町ことばとはちがうとおっしゃっていました。
このことが私の中では一番印象的だったので、そういった考えがよく表れている意識調査を紹介します。太字がFさんの答えの要約です。
W.意識調査
1.
問1「東京に方言はあると思いますか?」→ある
問2「何故そう思いますか?これは方言だと思う言葉などありましたら挙げて下さい」
→自分の地元のことばは、都心(牛込など)の人とは違う。都心の人は東京弁(江戸弁)で、自分のことばは東京の田舎のことばだと思う。
2.
問1「自分の話していることばは標準語だと思いますか?」→思わない
問2「何故そう思いますか?」
→自分のことばは標準語ではないが、標準語に近いことばだと思う。江戸弁は喋り方が速く、また言葉が省略されている(思いませんをオモワネェと言ったりすること)のが特徴で、これは標準語ではない。
3.
問1「自分の言葉を山の手の言葉だと思いますか?下町の言葉だと思いますか?」
→山の手だと思う。下町ことばは、さっきも言ったように喋り方が速く、言葉の省略が多い。自分たちの使う山の手ことばはもっとゆっくりではしょり(ことばの省略)が少ない。下町ことばは町人のことばで、山の手ことばは百姓のことばである。
4.
問1「自分の話している言葉は、地元の若い人が話している言葉と違うと思いますか」
→思うときがある
問2「どうしてそう思いますか?」
→百姓のことばではなくなってしまった。昔より喋り方の丁寧なことばになった。
以上が意識調査の結果です。私は父の実家が神田なので神田の祭りによく参加するのですが、そこでの人々の会話を聞いている限りではFさんの方がずっと速く喋っているように感じました。喋りの速さはただ単にFさんの個性なのでしょうか。ですが、先に述べた連母音の長音化や「ヒ」を「シ」と発音したことなどの下町的要素をみると、やはりFさんのことばは下町的だと感じます。山の手ことば=百姓ことばという考えも印象的でした。