高年層結果報告T・M氏
国文学科3年 西山紘大

1、調査概要(調査対象者のプロフィール)
・ 調査対象者・・・東京都世田谷区在住 T・M氏(79歳)
・ 調査方法 ・・・インタビュー式アンケート
・ 回収方法 ・・・即日回収
・ 調査日時 ・・・2004年1月18日
・ 対象者のプロフィール
 対象者のT・M氏は世田谷区文化財保護指導員をやっており、自ら論文を書いている方で非常に世田谷区の言語について詳しい方だった。そのため、事前に世田谷区の方言について調べてくれており私としても調査しやすい方だった。兵役の外住歴については半年間おありだった。家族構成は配偶者、娘夫婦、孫2人という典型的な二世帯家族で家族の雰囲気もいいものだった。屋号については昔は酒屋を営んでいたらしい。テレビは早くからあり昭和25年ころからあったと語ってくれた。

2、 調査結果・各項目ごとの考察
・ 音声聞き取り調査
 彼は基本的に東京言語を発しておりアクセントに関する点ではあまり効果的な傾向は得られなかった。しかし、言語に関しては「ヒト」を「シト」、「アサヒ」を「アサシ」と発音していた。また鼻濁音に関しては「カガミ」と普通に発音していた。このことから一般的な東京都言語話者といえるだろう。

・ 東京方言言語調査
 かなりばらつきのある結果となった。「おっかない」などの単語の調査では使う語と使わない語の区別がはっきりなされていた。これは、本人の意識によることが要因だろう。「〜じゃん」に関しては戦後から使われた言葉だと語っており、自分たちより下の年代からよく聞くと語ってくれた。「〜だべ」「〜べ」に関してはほとんど「使わないが聞く」という意見だった。これはやはり若い人から聞く、という意見だと思うのだが、方言の研究者らしい意見が返ってきて山梨県か千葉県の方言ではないかという意見だった。つまり、若い人は地方の言葉に影響されて使っているという意味なのだろう。

・ 東京方言意識調査
 「暑いといっても」「二つしか」に関しては用意された項目についてかなりの項目    を使用するらしい。その一つ一つに独自の見解を述べており、「暑いったっても」は一種のスラング、「二つっきゃない」はおどけた表現だと述べていた。命令形に関しても両方使うという意見だった。意識調査では常に標準語を話すことを研究しており古典文学に詳しかったことも自分とってプラスになっていて自分は下町言葉でも山の手言葉でもない標準語だと語っていた。

・ 丁寧語調査
 「お」をつけるものと何もつけないものしか解答としてはなかったが実に興味深     いことを語ってくれた。「ご」をつけるといやらしく聞こえるといっていた。それと自分は俳句をやっているので簡略的な言葉が好き。だから「お」をつけなくていいものにはあえて使わないといっていた。

・ ら抜き言葉調査
 ら抜き言葉は一つも「ら」を抜かないといっていた。「居られる」は「おられる」とも発音し敬語に聞こえるからあまり使わないと話していた。

・ 遊びの調査
 「じゃんけん」ではかなりおもしろい意見がでた。まず「グーチョキパー」の呼び方。「グー」が「げんこ」、「パー」は「手のひら」。しかも「あいこ」の場合「もいちどもいちどかみきりじゃん」、「勝っても負けてもこれきりじゃん」という初めて聞く表現が出てきた。二つのチームに分ける場合は「紙とはさみで〜」というものも使っていたらしい。

3、 感想
 本人が言語研究者ということで、調査というか講義を聴きに言っている感じがした。調査では独自の見解を述べ、私たちが割って入る隙をあたえない観点から論理を展開し非常に勉強になった。しかもご本人が書いた論文や事前に調査した資料などを私たちにくださり、とてもありがたかった。しかも、今後の調査にも協力してくれるといってくださり、こちらとしては恐縮の限りだった。しかし、力強い味方ができたとも感じうれしさもあった。本当に有意義な調査となった。

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