5.1.デパート閉店前店内放送


国文学科2年 塚本雅樹 松井一晃



5.1.1.調査項目

デパートにおける店内放送、その閉店前の放送という部分にスポットを当て東京とその近郊地域を調査した。調査した地域を“東京23区内とそれ以外の地域”という大まかに二つの地域に分け、ここでは主に東京23区内のものを取り上げたいと思う。




5.1.2.結果報告

@時間

調査内容のひとつに“閉店放送を流し始める時間”を挙げた。結果を見ると、場所(地区)による時間の統一などは見られなかった。全くバラバラであったように思う。銀座や新宿などの店舗が集まった地区でも、30分前に放送を流す店舗もあれば、10分前に放送を流す店舗がある、というように統一は見られなかった。では各デパートごとにまとまりはあるだろうか、とも思ったが、三越や高島屋といった大手デパートにおいても時間のまとまりは見られなかった。次に挙げるのは三越の各店舗ごとの閉店放送が流される時間である。


銀座店

日本橋店

新宿店

恵比寿店

10分前

30分前

20分前

15分前

(放送班・塚本雅樹・表1・三越における閉店放送が流され始める時間)


と時間におけるまとまりはみられない

全体でまとまりはみられなかったが、考えを変えれば、「放送を流さないデパートは見られなかった」とも言える。



A言語

調査内容のふたつめに“閉店放送を何言語で流しているか”ということを挙げた。ここでは、“一番初めに流れる閉店放送”ではなく“閉店時間になった際に流れる放送”をみてみよう。ここでは大きく銀座地区・渋谷地区・新宿地区・池袋地区(上野含む)と分けてみてみたい。




 

 
@銀座地区                A渋谷地区

 

B新宿地区                C池袋地区

(放送班・塚本雅樹・表2:地域別閉店放送に使われる言語


地域別にはこのようになった。
特徴としては、銀座地区ではプランタン銀座が仏語を閉店放送にも使用しているため仏語がある事、新宿地区では高島屋・小田急・京王百貨店の3店舗で韓国語・中国語が使用されている事が挙げられる。面白いのが西武池袋店で、閉店時間前の放送では仏語・韓国語・中国語と流しているが、閉店時間の放送では日本語・英語の2言語しか流さない点である。

結果として新宿が多言語に対応している事が分かるが、自分のイメージとしては老舗デパートが多い銀座の方が多言語にもっと対応していると思ったので少し驚きである。



B内容

10店舗において閉店放送のみ、レストラン街などがある9店舗では閉店放送+レストラン街の案内を流すという結果がでた。閉店放送の内容では、地域別・店舗別で特にこれといった特徴が見られなかったのが残念である。




5.1.3.まとめ


結果をまとめてみると、地区別、店舗別などでまとまりはあまりみられなかったように思う。日本はマニュアル文化だと言われているが、サービス業においてはそれが顕著だと私は思う。店舗が多いほど、マニュアルを作ってそれに従う方が無駄のない流れが作られると思っているからだ。放送などに関してもそうだろう。そういった考えがあったため、今回三越や高島屋などの店舗の多いデパートで店内放送におけるまとまりが見られなかった事が大変意外であった。これはなぜだろうか?店舗ごとでその会社が独立しているからだろうか。そう思い調べてみたが、会社がそれぞれ独立しているわけでもない。と言う事は、放送に関しては本当に店が独自でやっている事なのだろう。そうなると、独自の割に個性が見えにくいのはどうなのだろうか。例えば、新宿地区で韓国語・中国語の放送が何店舗かあったのは特徴といえば特徴ではあるが、それ以外の地区では全く特徴が見えない。銀座は老舗デパートが多くある地区だし、土地柄外国からも多くの人が来ると思われる。多言語のパンフレットがあるのもそのためだろう。それならば、放送に関してももっと多くの言語を取り入れてみてもいいのではないだろうか、と私はそう思う。23区内、山手線の中では昨今多くの外国人を目にするし、彼らがデパートを利用することも多々あるだろう。そういった事を考えてみると、“デパートの店内放送”といったところから、国際社会に開ける日本というのを見せてみてもいいのではないだろうか。



5.1.4.多言語化について

近郊のデパートは23区のデパートに比べ多言語化されていないのではないか、と予測を立ててはいたものの、その予測を上回るほど近郊のデパートは多言語化されていなかった。近郊のデパートの閉店放送では、伊勢丹立川店と高島屋立川店の2店舗だけが日本語と英語の2言語に対応していたが、ほかのデパート全てが日本語のみの対応であった。

理由はやはり需要の少なさで、川口そごう店に「日本語のみの放送をしていて、外国人のお客様から多言語化の要望などはなかったか?」と聞いてみたところ「東京23区のデパート、特に観光地がある場所と比べると、近郊のデパートは統計的にも外国人のお客様は少なく、多言語化の要望などは今まであまり例がない」とのことで、近郊のデパートは多言語化のサービスを導入するよりは地域のお客様、またはターゲット層のお客様が満足できるようなサービスを特化しているところが多いのではないか。例をあげると、近郊のデパートは23区のデパートと比べると来客者の年齢層が若干高くなる。そうした事から店内放送の日本語を高い年齢層向けの丁重な日本語にしてみたり、ゆったりとした口調にしてみたり、同じ日本語の放送にしてもこだわったサービスを行っている。例外として立川だけは二店舗ともに英語に対応した店内放送が行われていたので、英語圏の外国人が地域に多く住んでいて多言語化の要望などがあったと推測できる。




5.1.5.閉店前の放送






5.1.6      調査結果と考察

閉店前の放送回数は、1回が4店舗・2回が3店舗・3回が2店舗で、その他が4店舗と少ない店舗が多く、さらに半分の店舗が閉店前の放送は挨拶・閉店の案内のみという結果になった。その他の放送はレストラン街の案内が2店舗行っていた他は、各店舗それぞれ違った案内をしていた。閉店案内は早くて30分前、遅いところは2分前に放送が始まり、閉店時間は8時00分閉店の店舗が8店舗、7時30分閉店の店舗が5店舗という結果になった。都内近郊のデパートに比べると若干閉店時間は早い。ランダムなものが多く、調査対象がもう少し多ければわかることも多かったかもしれない。