今年は様々な地域の方言の保存・継承・活用事例について調べました。
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はじめに
田中ゆかり

このサイトは、2021年度後期開講の基礎演習2の授業報告です。基礎演習は国文学科の専門科目のひとつで2年次配当の選択必修科目です。この科目は、国文学科の2本柱のひとつ日本語学のうち、現代日本語学の基礎的スキルを学ぶことを目的としています。

昨年度に引き続きCOVID-19感染症拡大に伴い、隣地調査と大学の図書館やパソコン教室におけるグループワークができなくなりました。

そこで、オンライン環境において利用可能な電子資料を中心に調査・分析が可能なテーマとして「「方言」で読み解く日本語社会」を基礎演習のテーマに設定しました。

この科目では、調査対象とする時代を「平成期以降」とし、社会動向を探るデータソースとしてアクセスできる新聞記事データベースをメインとしました。履修者は、まず、電子資料の使い方の練習を兼ねた予備調査を経て、全国47都道府県から調査対象地域を選びました。その上で、地域によって「方言」がどのように保存・継承、あるいは活用されているのかを主として新聞記事データベースから探るというミッションに取り組んだ次第です。

調査対象の選定、データ収集の際のキーワード等の設定、収集したデータの分析と報告は個人で行うこと、としました。一方、会議システムや学部の学習支援システムを通じ作業内容を共有、発表については全員参加でフィードバックしあうことを通じ、受講者間の交流がはかれるよう心がけました。

オンライン授業ではあるが、日本語学の基礎を学びながら、現代社会のありようの読み解きを実感してもらうことを目指しました。この授業には、日本語学を専門とする大学院博士前期課程1年の峰島大貴さんにTAとして参加してもらいました。峰島さんには、各回のLMSコンテンツの事前確認、国文学科の先輩としての受講者への電子資料の使い方やパワーポイントや図表作成についてのちょっとしたコツの伝授や、教員とは別の視点から捉えた各回発表へのフィードバックなどを担当してもらいました。

拙いところもあるとは思いますが、なかなか興味高い結果が示されていると思います。学部学生たちが自分たちなりに「方言」から現代日本語社会を読み解こうとした試みとして、本サイトをご覧ください。

【授業の方法】

  • 同時双方向型授業。連絡ならびに資料配布、フィードバックなどはLMS経由で行う。
  • 「方言」の保存・継承・活用事例についての導入的講義ならびに文献・電子資料等の使い方などを毎回の課題を積み上げるかたちで学びながら、履修者各自においてテーマを選択し、そのテーマについてのデータ収集・調査・発表を行う演習。毎回の課題は事前・事後の学修をつなぐものとして課す。
  • 各自発表はパワーポイントを画面共有しながら行う。
  • 最終課題は、発表後のフィードバックを受けて発展させたノート付きパワーポイントを予定。最終課題は、Web版報告書としてまとめる。

【授業概要】「方言」で読み解く日本語社会

日本語社会における「方言」の価値の高まりを受け、「方言」の保存・継承・活用の事例に事欠かない。この科目では、各地の取り組みについて調査・分析することを通じ、日本語社会を読み解く目を養うことを目的とする。

【授業のねらい・到達目標】

「「方言」の保存・継承・活用の実態は、時代・地域・媒体により異なる。この違いは、時代・地域・媒体・コンテンツによって「方言」の価値が異なるということを示唆するものである。この科目では、各地の取り組みについて調査することを通じ、日本語社会を読み解く目を養うことを目的とする。同時に、具体的な言語研究の企画・実施、分析と報告までの一通りを学び、自分自身で現代日本語学の研究テーマについて調査の立案から分析まで実行するための知識とスキルを獲得することも目的とする。

【授業計画】

  • 09/22  1 ガイダンス 発表日調整、LMS環境整備、学習環境確認
               課題:調査対象地域の検討
  • 09/29  2 「方言」の保存・継承・活用事例についての導入的講義
               課題:調査対象地域を選び、調査対象地域についての基本的な調査とその整理
  • 10/06  3 対象地域や対象地域の「方言」を調べる文献・電子資料の使い方(講義と実習)
               課題:調査対象地域の「方言」について調査とその整理
  • 10/13  4 「方言」の保存・継承・活用事例調査の文献・電子資料の使い方(講義と実習)
               課題:調査対象地域の「方言」の保存・継承・活用事例調査とその整理
  • 10/20  5 発表についての解説
               課題:発表についての解説に従い調査とその整理
  • 10/27  6 発表準備、発表についての質問・相談
  • 11/03  7 発表とフィードバック① 2人
  • 11/10  8 発表とフィードバック② 3人
  • 11/17  9 発表とフィードバック③ 3人
  • 11/24  10 発表とフィードバック④ 3人
  • 12/01  11 発表とフィードバック⑤ 3人
  • 12/08  12 発表とフィードバック⑥ 1人
  • 12/15  13 発表とフィードバック⑦ 1人 最終課題作成解説
  • 12/22  14 最終課題報告作成にむけての課題整理
               最終課題作成についての質問・相談
  • 01/19  15 最終課題の提出 全体のふりかえり

【教科書】

教科書は使用しない。適宜印刷資料を配布する。

【参考文献・資料】

  • ①『日本のことばシリーズ 〇〇都道府県のことば』明治書院
  • ②『講座方言学 〇〇地方の方言』国書刊行会
  • ③井上史雄他(2013)『魅せる方言 地域語の底力』三省堂
  • ④木部暢子他(2013)『方言学入門』三省堂
  • ⑤木部暢子編(2019)『明解 方言学辞典』三省堂
  • ⑥小林隆編(2007)『シリーズ方言学3 方言の機能』(岩波書店)
  • ⑦小林隆・篠崎晃一・大西拓一郎編(1996)『方言の現在』(明治書院)
  • ⑧半沢康・新井小枝子編(2020)『実践方言学講座1 社会の活性化と方言』くろしお出版
  • ⑨大野眞男・杉本妙子編(2020)『実践方言学講座2 方言の教育と継承』くろしお出版
  • ⑩小林隆・今村かほる編(2020)『実践方言学講座3 人間を支える方言』くろしお出版
  • ⑪田中ゆかり(2011)『「方言コスプレ」の時代 ニセ関西弁から龍馬語まで』岩波書店
  • ⑫田中ゆかり(2016)『方言萌え!? ヴァーチャル方言を読み解く』岩波書店