はじめに

1.「日本語学基礎演習」の位置づけ

 「日本語学基礎演習」は、国文学科の専門科目のひとつで、2年次配当の選択必修科目です。3・4年次からの特殊研究ゼミナール選択のためのプレゼミという位置づけであると同時に、現代日本語学の方法を学ぶことを目的としています。
2009年度は、「マンガにあらわれる方言」というテーマで、後期(木曜1限:ML4)に開講しました。このテーマは、「言語ステレオタイプ」や「ことばとキャラクター」に関連するもので、とくにヴァーチャルな世界における「方言」の認識と運用に関連しています。キー概念として、「役割語(金水敏,2003)」、「キャラ助詞(定延利行,2005)」、「方言アクセサリー化(小林隆,2004)」、「方言おもちゃ化(田中ゆかり,2007)」などがあげられます。
ことばとキャラクターに対する関心は高く、2010年2月1日には、国際交流基金関西国際センターが運営するサイトに、キャラクターやジャンルによる日本語表現学習を目的とした日本語学習者向けEラーニングサイト「アニメ・マンガの日本語(http://anime-manga.jp)」が公開されました。
本サイトは、「日本語学基礎演習2」履修者によるレポートを、Web版の報告書としてまとめたものです。


2.授業の目的・進め方

授業の目的・進め方などは、以下の通りです。


2.1.授業のねらい

マンガというメディアにおいて日本語の「方言」がどのように用いられているか調査・検討します。そのことを通じ、現代の“日本”において「方言」がどのように受容されているのかをみていきます。同時に、テキストを対象とした言語調査の基本、分析結果の提示方法などを学習します。


2.2.授業の方法

グループによる演習。授業開始期の全体討議により、調査の対象と調査観点(項目)を決定しました。その後、グループごとにデータ収集と分析を行ない、分析結果の一部について発表を行ないました。発表者は、発表に対するフィードバックを受けて、学期末に2種類の最終課題(冊子報告書、web報告書)を提出しました。なお、この授業は、ML(PC室)で、実習を伴うものであったため、TA(林直樹さん)による授業補助を得ました。また、クラスの運営に科目専用のメイリングリストを構築しました。
各グループにおいてテーマを決定するに際して、次のようなヒントを提示しました。「地域・言語別」、「作品カテゴリ別」、「雑誌別」、「観点別」、「作品発表年代別」。


3.参考文献など

授業導入に際して、以下の文献・サイトなどを紹介しました。


3.1.方言マンガ探索資料

3.1.1.雑誌

このマンガがすごい!編集部(編)(2008).ご当地マンガMAP このマンガがすごい! SIDE-B.宝島社


3.1.2.ウェブ

exite.ブックス 本・読み物ポータルTOPICS ニュースな本棚 方言ヒロインを探せ(うめ/難民チャンプ)http://media.excite.co.jp/book/news/topics/116/(2009/9/27最終閲覧)
集英社マンガネット http://www.s-manga.net/
小学館コミックシップ http://comics.shogakukan.co.jp/
講談社コミックプラス http://kc.kodansha.co.jp/
yahoo!コミック http://comics.yahoo.co.jp/


3.2.言語ステレオタイプ

3.2.1.単行本

木下順二(1982).戯曲の日本語 大野晋・丸谷才一(編) 日本語の世界12 中央公論社
金水 敏(2003).ヴァーチャル日本語 役割語の謎 岩波書店
金水 敏(編著)(2007).役割語研究の地平 くろしお出版
定延利之(2005).ささやく恋人,りきむレポーター 口の中の文化 岩波書店
定延利之・中川正之(編著)(2007). 音声文法の対照 くろしお出版


3.2.2.雑誌特集

『文学』《特集》ステレオタイプ,7(6).岩波書店
⇒定延利之(2006).ことばと発話キャラクター
⇒清水義範・小林幸夫・山田俊治・金水敏(2006).《座談会》ステレオタイプとは何か
『文学』《特集》言と文,8(6).岩波書店
   ⇒金水敏(2007).言と文の日本語史
   ⇒田中ゆかり(2007).「方言コスプレ」にみる「方言おもちゃ化」の時代


3.2.言語ステレオタイプ

3.3.1.単行本

佐藤和之・米田正人(1999).どうなる日本のことば 大修館書店 ⇒友定賢治(1999).「つくられた」方言イメージと共通語イメージ
真田信治・陣内正敬・井上史雄・日高貢一郎・大野眞男(2007).シリーズ方言学3 方言の機能 岩波書店
金水敏・乾善彦・渋谷勝己(2008).シリーズ日本語史4 日本語史のインタフェース 岩波書店


3.3.2.論文

井上史雄(1977.08,09).方言イメージの多変量解析(上・下) 言語生活,311,312.
井上史雄(1980).方言イメージの評価語 東京外国語大学論集,30.
大石初太郎(1970).東京の中の方言コンプレックス—「ことばについてのアンケート」報告3— 専修国文,7.
沖 裕子(1986).方言イメージの形成 国文学,64. 北山紗弥子(2004).消え行く富山弁と,使われ続ける富山弁—マスメディアとの関係から— 語文,119. 
小林 隆(2004).アクセサリーとしての現代方言 社会言語科学,7(1).
佐藤和之・米田正人(編)(1999).どうなる日本のことば—方言と共通語のゆくえ 大修館書店
真田信治(2000).脱・標準語の時代 小学館
ダニエル=ロング(1990).大阪と京都で生活する地方出身者の方言受容の違い 国語学,162.
田中ゆかり(2001).ケータイ・メイルの「おてまみ」性 国文学 解釈と教材の研究,46(12).
田中ゆかり(2005.03).携帯メイルハード・ユーザーの「特有表現」意識 中村明先生記念論文集 表現と文体 明治書院.
田中ゆかり(2005.03).携帯メイルにおけるキブン表現 語文,121.
田中ゆかり(2006.04a).メールの「方言」は,どこの方言か 国文学 解釈と教材の研究,51(4).
田中ゆかり(2006.04b).「東京首都圏」に「方言」はあるのか 国文学 解釈と教材の研究,51(4).
徳川宗賢(1985).ことばづかいの風土性 九大学連合日本の風土調査委員会(編) 日本の風土 弘文社
中井精一(2004).お笑いのことばと大阪弁—吉本興業の力とは— 日本語学,23(10).
新田実(2003).仮名変換<方言モード>開発の道のり 言語,32(5).
文化庁国語課(2002).平成13年度 国語に関する世論調査 日本人の言語能力を考える 財務省印刷局
三宅和子(2006).携帯メールに現れる方言—「親しさ志向」をキーワードに— 日本語学,25(1).
山西由里子(2007).女子大生の書き言葉コミュニケーション—媒体差表現の男女差から 語文,128.


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