前のページへ

ギャグマンガにおける方言キャラクター

国文学科2年 武藤一路

調査項目

ギャグマンガにおける方言使用キャラクターの持つイメージや役割といったものが、それぞれのキャラクターの性質を分析、比較することにより明らかになるのではないかと考え、分析対象方言使用キャラの使用方言、性格に注目し、その傾向を調査した。
(今回調査対象としたのは2000年以降に集英社『週刊少年ジャンプ』に掲載されているギャグマンガである。尚ギャグマンガとはコメディ色の強い物語構成に、ボケ、ツッコミの役割を持つキャラクターが存在し、最後にオチがある展開を含むマンガを指す)


調査結果


表1.分析対象キャラクター表

キャラクター名(作品概要)性別使用方言
御堂春(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』秋本治140巻2004年)関西弁
突吉こむ平(『ピュ~と吹く!ジャガー』うすた京介 7巻 2004年)関西弁
クサ・千里(同上・14巻2008年)九州弁
坂本辰馬(『銀魂』空知英秋 4巻 2004年)四国弁
陸奥(同上)四国弁
花子(『銀魂』空知英秋 6巻 2006年)関西弁
大久保保(『メゾン・ド・ペンギン』大石浩二1巻2006年)東北弁
姫小路真莉(同上)東北弁
鬼塚一姫(『SKET DANCE』篠原健太  1巻2007年)関西弁


性格備考
活発 ケチ 多弁大阪署巡査 貧乏育ちでケチ 東京出身の主人公とよく対立する
活発 馬鹿 多弁鳥取から上京してきた、ツッコミに命をかける若手芸人だが、終始無視され続ける
馬鹿主人公の敵対組織からの刺客 主人公を倒しに来たが和解する、しかし結局侮蔑の目を向けられた
天然ボケ歴史人物である坂本龍馬をモデルとするキャラクター。宇宙船でいくつもの星を渡り、争いではなく貿易による商売によって世の中を良いものとしようと考える。
冷静辰馬の志に共感し行動を共にする副官的な役割をもつ人物。辰馬のボケを呆れながら冷静に対処するツッコミ役
天然ボケダンサーを夢みて上京するも悪徳信仰宗教に騙されて財産を失ったことから主人公達に相談、物語がスタートする
馬鹿不細工な容姿に酷い訛が特徴 同棲している彼女(姫小路)をまりっぺと呼び、ラブラブな生活を送る。
馬鹿同じく不細工な容姿に酷い訛が特徴 彼氏(大久保)をたもっちゃんと呼び、ラブラブな生活を送る。
活発 攻撃的 多弁もとは有名な不良であったが、主人公をリーダーとするスケット団(学園生活支援部)に所属。活発に行動し、ツッコミをはさみながらも学園内のトラブルを解決していく。

*今回分析対象とした作品は、それぞれの方言使用キャラクター初登場話掲載巻である。


表2.男女別における方言使用率

ギャグマンガにおける方言キャラクター

考察

(表2)キャラクター一覧によると、分析作品内における方言使用キャラは、性別においてはほとんど偏りが見られないが、男女別における方言使用率は関西弁にやや偏る傾向がある。しかし、多くのキャラクターが短い話数で入れ替わり登場するといったギャグ漫画の構成上、人数は少ないながらも比較的幅広い地域からのキャラクターが登場している。
関西弁のキャラクターは明るい、おしゃべり、積極的、といった傾向がみられ、総合的に明るく活発で外向的でありツッコミキャラが比較的多いが、『銀魂』の花子のようにボケの役割を持ち、場を乱すキャラクターとして登場するキャラもいた。そのように作品内における役割に多少の違いはみられたが、いずれのキャラも多弁であり、やや慎重さの欠けた行動的なキャラクターとなっている。
その他の東北、九州、四国弁のキャラクターにおいては、積極的に発言、行動していく関西弁キャラクターとは対照的に、むしろその歯切れの悪い「クサ」や「だっぺ」等の語尾をはじめとする、やや間延びした独特の口調で会話し、故意に田舎臭さをかもし出しているように捉えることのできるキャラクターが多い。発言や行動に関西弁のような勢いはあまりないものの、そのキャラクター自体は意図せずとも結果的にその独特の雰囲気、行動が突っ込みの対象となったり、オチへと繋がる傾向がみられた。


ページトップへ