前のページへ

キャラクターの方言使用状況について

国文学科2年 田崎奈津美

少女漫画誌『りぼん』の中に出てくる関西弁使用キャラクターが物語の中でどのように(またはどのくらい)関西弁を使用しているのか、実際の台詞・台詞数から考察した。今回調べた作品の中では、キャラクターが恒常的に関西弁を使用しているケースの方が臨時的に関西弁を使っているケースよりも多かったため、そちらの方に焦点を定めている。
今回使用した作品は『世紀末のエンジェル』・『ラブラブ・ショック』・『ご近所物語』(90年代の漫画)、『ソラソラ』・『チョコミミ』・『たらんたランタ』(00年代の漫画)の6作品であったが、その中で『世紀末のエンジェル』(草太郎)・『ラブラブ・ショック』(翔太)・『ご近所物語』(西野ジロー)・『ソラソラ』(及川空子)・『チョコミミ』(安藤竜之介)に出てくる関西弁使用キャラクターはそれぞれ、関西弁をほぼ恒常的に使っている。
以下のグラフは上記5作品に出てくるキャラクターの台詞についてのグラフである。


図1)

キャラクターの方言使用状況について

関西弁を恒常的に使っている、と一口に言ってもそれはほぼ100%にかなり近いと言えるものから(『ラブラブ・ショック』の翔太など)(とはいえ、80%を少しこえる程度である)、大体五分五分であろうと言えるものまで(『チョコミミ』安藤竜之介や『世紀末のエンジェル』草太郎など)その方言使用率にはかなりばらつきがある。キャラクターの出身地を関西に定めていて、その上キャラクターが関西弁について嫌悪や何かしらの負の感情を抱えていたり方言を使用することに負い目を感じているなどという設定も特にないにもかかわらずである。(ちなみに、『たらんたランタ』はこのタイプの方言使用方法をとっているためキャラクターは臨時的に方言を使用している。)
この五作品のキャラクターの中で一番関西弁使用率の低い『チョコミミ』をピックアップしてみる。
安藤竜之介は大阪からやってきた転校生である(おまけページに作者本人の記載あり)。自分が方言を使っていることについて、作中で彼のその心情に触れる機会がないためわからないが、転校してきても変わらず方言を使い続けていることから、多分方言を使うことに関して特に何か思うところはないのだろうと考えられる。しかし、彼はほぼ恒常的に方言を使用してはいるが、標準語のような言葉を使っていることも同じくらい多い。(表より、台詞総数224のうち標準語+標準語一語は131であり、半分である50%をこえてしまっている)また、使われている関西弁についても、軽くてわかりやすい関西弁が多いという印象を受ける。安藤竜之介は大阪から来た転校生であるため、「関西方言っぽいもの」ではなく間違いなく関西方言を使っているはずだ。しかも作者自身も兵庫出身であるので関西弁がわからない・なんとなくのイメージで使っている、などということもないはずだ。彼はベタベタの関西弁を使用していてもいいはずの設定であるのに、それにも関わらず、関西弁と標準語がかなり入り混じっている。
なぜこのような現象が起きたのか。それはこれらの作品をとりあつかう雑誌が『りぼん』であることに関連があるのではないかと考えた。
『りぼん』は小・中学生を主な読者層としているので、標準語からあまりにかけ離れた方言を使うと、そのキャラクターが一体何を言っているのか読者がわからなくなってしまい物語を理解することができなくなってしまう、なんてことになってしまうということも起き得るので、それを防ぐための配慮なのではないかと思う。
そのため、『たらんたランタ』のようにここぞという要所にだけ臨時的に関西弁が使われたり、『チョコミミ』のように、キャラクターがその関西地区出身でバリバリの関西弁を使っていてもいいはずの設定なのにそこまできつい方言を使っていない、それどころかちらほら標準語のようなものが混じったりしている、なんてことが起きているのではないかと考えられる。
また、年代比較については、同じ年代同士での共通点がまず見つからなかったので比較には至らなかった。


ページトップへ