デパートの館内放送、特に比較がしやすい閉館放送に的を絞って調査した。
尚、調査対象は
≪銀座≫和光・三越・松坂屋・松屋
≪有楽町≫阪急・ルミネ
の6店舗で放送される「テープ放送(あらかじめ録音されているもの)」とした。
① 使用言語の種類
各店舗で使用されていた言語は以下の通りとなった。
[ 表1:銀座のデパートにおける使用言語 ]
≪銀座≫
店舗名 | 使用言語 |
---|---|
和光 | チャイムのみ |
三越 | 日本語・英語・中国語 |
松坂屋 | 日本語・英語・フランス語 |
松屋 | 日本語・英語 |
[ 表2:有楽町のデパートにおける使用言語 ]
≪有楽町≫
店舗名 | 使用言語 |
---|---|
阪急 | 日本語・英語・中国語 |
ルミネ | 日本語・英語 |
音声案内があったのは6店舗中5店舗で、使用された言語は日本語と英語が5店舗、中国語が2店舗、フランス語が1店舗となった。また個々のデパートの言語使用数は3言語使用が3店、2言語使用が2店、言語使用無しが1店となった。共通語である英語は音声放送のあった全ての店舗で使用されていることが分かる。全体としては4言語にとどまり、予想よりも使用言語数は下回っていた。
2005年度に行われていた調査結果と今回の調査結果から全体の使用言語数には変化が見られなかったものの、個々の店舗での使用言語数は比較的増えていた。2005年度では日本語のみを使用していた店舗も多かったが、今回の調査では音声案内のあった店舗では全ての店舗が英語も使用していたのである。つまり全体の使用言語数の伸びは見られなかったものの、個々では少しずつ増加しているということだ。おそらく今後も少しずつ多言語化は進んでいくのではないかと思う。
日本政府観光局(JNTO)の訪日外客統計(2011年度)を見ると、国別訪日外客数のトップは韓国で、次いで中国、台湾、アメリカ、香港と続いているのが分かる。
[ 図1:2011年訪日外客数上位5国とその割合 ]
そして、この図のように上位5国のうちの4国がアジア圏の国なのである。今回の調査で使用されていたアジア圏の言語は中国語が2店舗で使用されていたのみであったが、この結果を見ると次に使用言語として増えるのは中国語や韓国語などの言語ではないかと思われる。
多くの場で耳にする「国際化」の波紋はデパートの館内放送といったささいなことにも影響を及ぼしているという事が、今回の調査でよく理解することが出来た。今後も言語以外でも様々な場でこの「国際化」の影響は表れてくるだろう。
【参考URL】
・日本語学基礎演習2「首都圏デパートにおける多言語サービスの現状調査報告」
・日本政府観光局(JNTO)HPより「2011年度訪日外客統計(総数)」(2012.01.09)