仮説
仮説②-1 職業によって敬語(接客敬語)の理解力に差があるのではないか?
仮説②-2 経験歴の長さと理解力は比例するのではないか?
調査に使用した質問項目
質問I
下記の職種郡から経験したことのある職種に○を付け、その番号を( )内に記入の上、現在の時点での経験期間を記入してください。
複数ある場合には経験歴の長いものを優先し、3つまで書いてください。
- 営業・販売
- 講師・インストラクター
- 事務・受付
- 事務・作業
- 飲食ホール・キッチン
職種( ) 職歴: _年_ヶ月
質問Ⅱ
- ⑤(店員として会計時に客に対して)「お会計のほう、失礼します」
- ⑥(店員として会計時に客に対して)「お会計、一万円になります」
- ⑦(店員として会計時に客に対して)「おあとのかた、どうぞ」
- ⑧(従業員として)「毎度ご利用くださいまして誠にありがとうございます」
- ⑨(電話の受付係りが)「申し訳ございません、お声がちいさくて聞き取れません」
回答方法
- 使う
- 使わない
質問の答え
- ⑤ 2.使わない
- ⑥ 2.使わない
- ⑦ 2.使わない
- ⑧ 1.使う
- ⑨ 2.使わない
アンケート問題(質問Ⅱ)の意義
参考文献 小林作都子著「そのバイト語はやめなさいープロが教える社会人の正しい話し方-」より間違えやすい敬語としてあげられているものや、文化庁の国語に関する世論調査にも過去何度か調査されているものを出題。
これにより回答者がどの程度敬語を理解しているかが調査する。
データ
データの算出方法
・質問Ⅰ④の質問の答え(経験した職種)が複数ある場合は、経験歴が最も長いものを使用。
→その結果、営業・販売、講師・インストラクター、飲食ホール・キッチンの3つの職種を使用。
・質問Ⅱ⑤~⑨の問題を正解するごとに1点とし、計5点満点で採点する。
→得点数が高い人ほど敬語を理解している?
得点数が低い人ほど得点を理解していない?
データの結果1
全体の平均点
5点満点中3.16点
営業・販売(全4人)
3.5点
講師・インストラクター
(全5人)2.8点
飲食ホール・キッチン
(全10人)3.2点
データの結果2
得点別の平均経験歴
- ・1点 9.5ヶ月(2人)
- ・2点 22ヶ月(4人)
- ・3点 19.2ヶ月(4人)
- ・4点 22.2ヶ月(7人)
- ・5点 29.5ヶ月(2人)
☆全体の平均22ヶ月(全19人)
経験年数と得点の分散図
結果
仮説②-1 ・・・経験した職業で理解力に差がある
→職業別に見ると多少得点差が生じた。
仮説③-1 ・・・経験歴の長さで理解力に差がある
→多少の誤差はあるがほぼ仮説通りの結果となった。
先行研究
先行研究1:文化庁・国語に関する世論調査から
平成14年度に行われた「国語に関する世論調査」では、対象者に以下の言い方が気になるかどうかの調査を行い、以下の回答を得ていました。また平成8年度の調査を併用して結果を示していました。
★「お会計のほう、1万円になります」
平成8年度
・気になる・・・・・・・・・・・32.4%
・気にならない・・・・・・・63.7%
・どちらとも言えない・・・3.4%
平成14年度
・気になる・・・・・・・・・・・50.6%
・気にならない・・・・・・・40.6%
・どちらとも言えない・・・7.4%
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★「千円からお預かりします」
平成8年度
・気になる・・・・・・・・・・・38.4%
・気にならない・・・・・・・・58.0%
・どちらとも言えない・・・2.7%
平成14年度
・気になる・・・・・・・・・・・45.2%
・気にならない・・・・・・・44.3%
・どちらとも言えない・・・9.5%
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→平成8年度調査と比べて,いずれの言い方とも「気になる」の割合が増加し,「気にならない」の割合が減少している。
先行研究2:国語に関する世論調査から
結果を年代別に示す以下のようになる。
→どちらの言い方も,16~19歳では「気にならない」の割合が高く,「お会計のほう」は6割が,「千円から」も7割が「気にならない」とする。一方,50代以上は,どちらの言い方も「気になる」の割合が5割を超え,「気にならない」は3割台にとどまる
「お会計のほう、1万円になります」《年代別》
「千円からお預かりします」《年代別》
考察
考察1
- ・営業・販売、飲食ホール・キッチンの職種敬語を使う相手が“客”なのでより丁寧で正確な接客敬語を使うように意識するのに対し、講師・インストラクターは敬語を使う相手が初対面の相手ではなく定期的に顔を合わせる関係で、敬語を使うにしても、あまり神経質にならなくても(多少くだけた敬語の使用)良い場合があるからではないだろうか。つまり敬語を使う相手との関係性も影響したのではないか。
- ・設問には世間で誤用される例を多く含んでいて、点数の低い人はそれを誤って認識していると考えられる。
- ・経験歴が長ければ長いほど正答率が上がったのは、接客敬語の使用歴が長いということであり、その経験の中でより正しい敬語を使えるようになったためではないか。
考察2(先行研究より)
- ・平成8年度より14年度のほうが「気になる」の割合が増加し、「気にならない」の割合が減少したのは近年になるにつれ全体の正しい敬語の使用をすることへの意識が高まっているのではないか。
- ・年代別の結果から若い世代のほうがより誤った認識をしている。つまり誤った使用をしていると考えられる。
★このような幅広い世代のサンプル数が得られたらより詳しい世代別の正しい接客敬語の使用の調査ができたと思いました。
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