前のページへ

Group4 仮説3:敬語を利用する頻度・状況によって敬語の誤用率に差が出る

仮説分析に対応するアンケート項目

Ⅰ⑤ 先月一ヶ月間で、学校生活、アルバイト、サークル活動などの場で
敬語を意識して使用した機会はどのくらいありましたか。

〔1:週6日~7日 2:週に3日~5日 3:週に1~2日 4:その他(       ) 〕


Ⅰ⑥ おもにどのような時に敬語を使用しますか。(複数選択可)
〔1:家族との会話 2:アルバイトでの接客時 3:上司との会話 4:先輩との会話 5:その他〕


Ⅱ 下線部の敬語を 使う場合には1、使わない場合には2に○を付けてください。
10 (上司に対して)「部長は、よく恋愛小説をお読みになられるのですね」  ( 1 ・ 2 )
11(上司に対して)「部長は、来週の会議にご出席されるのですか」      ( 1 ・ 2 )
12(上司に対して)「部長が作った資料、読まさせていただきます」       ( 1 ・ 2 )
13(お客様に対して)「この施設はどなたでもご利用できます」         ( 1 ・ 2 )

仮説の検証

★仮説③を検証するにあたって、まずアンケートⅡ10~13で提示した以下4つの敬語は
全て誤用された例である。

統計データ

統計データ① (回答比率)

統計データ①(回答比率)

統計データ② (使用頻度×誤用敬語の使用)

統計データ② (使用頻度×誤用敬語の使用)

考察

⇒敬語の用法によって誤用が起こりやすいものとそうでないものがあるのではないか。

誤用の多い「ご出席される」、「ご利用できます」

これらの敬語の用法は、先にも述べたように
ご出席される・・・謙譲語「お/ご~する」+尊敬語「~れる」
ご利用できます・・・謙譲語「お/ご~する」の可能表現
であり、どちらも上司・お客様を相手に自分がへりくだるべき状況において目上の相手を主語に使用するのは誤りになる。

*正しい例は「ご出席になる」「ご利用になれる」など。

これらの誤用は、誤用されやすい用法として敬語に関する先行研究「敬語再入門(菊地康人)」において次のように説明されています。
(以下、「敬語再入門」章78から抜粋)

★敬語の過去・現在・未来(章78)

敬語に限らず、変化するのが言葉の宿命です。(中略)
大枠としては、尊敬語・謙譲語・丁寧語と概略的に三分される敬語のシステム自体は長い間変わらずに保たれてきたと言えます。ただし、具体的なレベルでは、<語形>を中心にさまざまな小さな変化たびたび起こってきました。
現在起こりつつある変化(の芽)としては、
①「ご~される」の定着化
②「あげる」の美化語化
③「(さ)せていただく」の謙譲語B(お/ごの付かない謙譲語)化の
④「お/ご~する」の尊敬語化  (以下略)

また、続く章83『「お/ご~する」の尊敬語化』では、この用法が近年著しく増加してきた敬語誤用の一つであるとして紹介されています。
⇒敬語の用法の正誤は時代と共に変化していくものであり、今回の調査で誤用された用法は、すでに尊敬語化されつつあるものである。

先行研究

国語に関する世論調査から①(使用頻度について)

平成17年度に行われた「国語に関する世論調査」では、対象者に敬語を使う頻度について、
☆あなたは、日常生活で、どの程度敬語を使っていますか。この中から選んでください。
と質問したうえで、以下の回答を得ていました。

=使っている 73.9%、 使っていない 25.9%

⇒回答者の意識によって「いつも」や「ある程度」の解釈に差は出るが、サンプル数が多ければこういった質問方法でも有効な考察ができたかもしれないと考えた。

国語に関する世論調査から②(誤用された敬語について)

誤用されやすかった「ご利用できます」

国語に関する世論調査で、今回提示した「ご利用できます」に類似した表現についての調査は度々行われている。

★平成7年度(有効回答数2212人)

『下線の部分の言い方は、あなたにとって気になりますか、それとも気になりませんか。』という質問。「御利用いただけます」については

(※どちらとも言えない、その他は割愛)

★平成9年度(有効回答数2240人)

『下線部では敬語が正しく使われていると思いますか。それとも正しく使われていないと思いますか。』という質問。
「御乗車できません」については『「御乗車になれる」というべきところに可能謙譲表現の形である「御乗車できる」を用いていることから誤用である』とした上で、結果を

としている。

★平成16年度(有効回答数2179人)

平成9年度とまったく同じ質問で「御乗車できません」について聞いていて、

⇒これらの研究結果が、今回文理学部で行った調査結果と類似していることから、この【可能謙譲表現】は誤用されやすい傾向にあると言える。

ページトップへ