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国文学科2年 澤本知彦

1. 調査項目

九州方言

2. 対象作品

表1

3. 対象キャラクター

表2

調査対象キャラクター キャラクター設定
千歳千里(ちとせせんり) 後述の橘桔平と共に「九州二翼」と並び称されるほどの実力の持ち主だったが、試合中の事故が原因で視力が低下、テニスの道を諦める。その後、大阪への転校をきっかけにテニスを再開。束縛を嫌う自由な性格。普段は飄々とした話し方と立ち振る舞いだが、実は研究熱心であり思慮深く、詰将棋のような試合を見せる。普段は熊本弁を話す。
橘桔平(たちばなきっぺい) 前述の千歳千里と友に「九州二翼」と並び称されるほどの実力の持ち主だったが、試合で千歳に怪我を負わせてしまった負い目からテニスの道を諦める。東京への引っ越しをきっかけにテニスを再開。持ち前のカリスマ性で周囲からは尊敬され目標ともされており、野獣のような荒々しい試合をする。現在は部長であると同時に監督でもあり顧問でもある。普段は標準語だが、感情が昂ると熊本弁で話す。
猪里猛臣(いのりたけおみ) 陰でチームを支える二番打者。素朴で穏やか、食いしん坊でもある。自称「福岡が生んだ超天然野生児」。グラウンドの土の状態や風の動きをつぶさに観察、これらを利用したバッティングが得意。時には体を張ってチームの危機を救うこともあり、現部長からは次期部長に相応しい選手として一目置かれている。常に博多弁で話すが、作者が似非博多弁である旨を告白している。

4. 九州弁ステレオタイプと各キャラクターの比較

表4

※漫画内での表現や設定、作者のコメントなどから判断して計算した。
当てはまるもの:+2
一部当てはまるもの:+1
当てはまらないもの:±0

5.考察

上記の表から分かるように、3キャラクター全員にほぼ全ての九州弁ステレオタイプが当てはまった。満点になる項目こそなかったものの、「男らしい」「親しみやすい」「荒っぽい」「感情的」、4つもの項目がほぼ満点になっている。この4項目が九州ステレオタイプの中でも特に濃いイメージだと考えられる。「男らしい」に関して、猪里猛臣はそのような設定もエピソードも無く、ここぞという場面で真価を発揮するタイプのキャラクターであるため1点とした。共通語キャラクター達の中に方言キャラクターを入れることで、穏やかな性格を強調しているのではないだろうか。
「親しみやすい」に関して、橘桔平は、部長兼顧問兼監督という設定と「強烈なカリスマ性で部を牽引。部員たちにとっては尊敬の的であり、目標にもなっている。」という記載から、親しみとは若干性質が異なっていると判断し1点とした。この点数の違いの原因は、方言を常用しているか否かが関係しているように思う。橘桔平は普段は標準語を使用し、方言が現れるのは地元に居る時と感情が昂った時のみである。標準語の使用頻度が「親しみやすさ」のイメージに影響を与えているのではないだろうか。

参考文献
佐藤和之・米田正人(1999)『どうなる日本のことば』大修館書店
田中ゆかり(2011)『「方言コスプレ」の時代―ニセ関西弁から竜馬語まで―』岩波書店