(潮田久)
福岡が舞台でありながら、方言話者が作品を通して3人しか登場しない「スケッチブック」という作品を取り上げ、その中で方言がどのような働きをしているのかを探る。
主要な登場人物の中で唯一の方言話者である「麻生夏海」と、「麻生夏海」との共通点は多いが方言話者ではない「鳥飼葉月」を比較することで、方言の働きを探る。
1巻、2巻
表4.麻生夏海と鳥飼葉月の比較
この表を見ると二人の間には共通する部分も多く、特に登場コマ数、吹き出し数に注目すると、登場回数や発言回数から見ても非常に近い存在であるということが分かる。しかし特長や性格に関する項目を見ていくと、麻生夏海は方言や性格について作中でほとんど言及されていないのに対し、鳥飼葉月はその性格を何度も取り上げられている。という違いも見られる。
次に、麻生夏海の所属する美術部のキャラ相関図を通して、二人の作中での立ち位置を分析する。
[図1.美術部における麻生夏海を中心としたキャラ相関図]
この相関図を見ると、麻生夏海と鳥飼葉月は両者とも「つっこみ」という役割を得ているということが分かる。
第一巻における麻生夏海のふきだし130こ中標準語は37こであり、そのなかでもほぼすべてが敬語であった。
→方言濃度は72%であり、方言濃度の濃い方言キャラである。
同じ「つっこみ」という性質を持ち、その作中での立ち位置が非常に近い麻生夏海と鳥飼葉月であるが、鳥飼葉月のような強い個性となる特徴や性格を持っていない麻生夏海に、そういった個性を与えるために「方言話者」という特長を持たせたのではないかと考えた。
つまりキャラ差別化のための方言であると言える。