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4.4.『京都太秦物語』に見られる京都方言

0312038 西村真美

映画をノベライズした小説であるため、セリフに関してはそれほど違いが見受けられなかった。

喧嘩シーンにおけるヒーローヒロインの総セリフ数は24で、そのうちヒーロー(康太)のセリフ数は10、ヒロイン(京子)のセリフ数は14であった。なお、これはいずれも句点で区切ったものである。このうち、非共通語であると思われる箇所をグラフにし、10種類に分類した。「せんと+いて」は「せんといて」で表記がなく、「せんと」の表記があったこと、ウィキペディアに「〜しないで」という分類が載せられていたことから、このような表記にした。

図3 非共通語の語数分布

図3 非共通語の語数分布

※康太のセリフ数は表現上マイナスとした

この図3から、両者ともに「〜や」の使用頻度が高いことが見て取れる。また、ヒーロー(康太)のセリフ数が少なく、「あかん」「おもろない」等の単語の使用頻度が高いように思われる。これは、康太役を演じたUSAが神奈川出身であることから、関西弁とすぐわかる単語を多く使うようにしたのではないかと考えられる。

小説の差異部分が少なく、京子役で京都出身の海老瀬はなの言葉は自然であるが、康太役で神奈川県出身のUSAは“関西弁に慣れてない”ように感じられた。

今回の調査では、ヒロインに京都ステレオタイプがもう少し現れるのではないかと思っていたが、見込みとは違い、それほど特徴は現れなかった。これは脚本の山田洋次が京都出身者ではなく、大阪出身者であることが関係しているのかもしれないと感じた。