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6.5 アンケート調査とテキスト調査の比較

0312012 沖潮里

6.5.1 「ニセ方言」の効果

アンケート調査では「ニセ方言」を使うことでどのような効果が得られると思うかを調査している。その結果と、収集したテキストを照らし合わせ違いをみる。6.3.ではメディア別に傾向をみているが、その中でも顕著な違いがあるLINEとTwitterについてここでは取りあげる。

アンケート調査で指摘された通り、LINEでは「内容が軽い感じ」を出すために「ニセ方言」を使用しているという意識がある。収集したテキストを見てみると、4や8は「面白くなる」意識で「ニセ方言」を使っている(表2)。7はどちらとも取れるが、顔文字も併用していることから「面白くなる」ために使用していると考えられる。2や6は共通語で言うと「教えなかったんじゃないの」「なんで遅刻するんだよ!」などとなり、少し強い印象を与える。また、3も深刻な内容ではなく、これらは「面白くなる」というよりも「ニセ方言」が「内容が軽い感じ」を表していると思われる。他のものも判別はし難いが、共通語と比べてみると「内容が軽い感じ」がするものが多い。

表2 「ニセ方言」を使用したLINEの文章

相手 本文
1 2013.1 親しい同性の友人 (文章)これ確定や
2 2013.11 親しい同性の友人 教えなかったんちゃうんか
3 2013.11 同性の友人 なんや東京駅の相場が高くて探し方もようわからん
4 2013.11 同期 窓際に席とったでー/マフラーと鞄置いてあるでー
5 2013.11 同性の友人 ええやろう
6 2013.12 友人 なんで遅刻すんねん!
7 2013.6 同性の友人 あたしヘタレやで…(顔文字)
8 2013.8 親しい同性の友人 相変わらずやでぇ

次にTwitterだが、アンケートでは「面白くなる」という意識が強いことがわかった。では、収集したテキストを見てみる(表3)。この中で「面白くなる」という意識で発信されていそうなものは5くらいで、他は「内容が軽い感じ」や「親しみを持てる」に分類される内容である。意識と実態に差があるということになる。

TwitterはLINEのように特定の相手と会話することもできるが、多くは不特定多数へ「つぶやき」として発信している。会話の中では親しみや内容を軽くするために使われる「ニセ方言」が、自分のことを積極的に発信する「つぶやき」では面白さを出すために使われていると思われる。今回のテキスト収集では「相手」という項目を設定したため、より会話に近い部分が表れたのではないかと考える。

表3 「ニセ方言」を使用したTwitterの文章

相手 本文
1 2013 友達 せやな○○
2 2013.1 不特定多数 あかんやつや
3 2013.1 異性の友人 調布か府中ならゲーセンあるでー
4 2013.11 異性友達 どこに行けば会えるやろ?時間あるようでないから会えるとも限らんが…
5 2013.11 不特定多数 あかーん
6 2013.11 同性の友人 コピバン久しぶりだから不安だわさ
7 2013.11 (無記入) そもそも言語学の先生が少ないねん…。
8 2013.11 フォロワー フルートは空気抵抗がないからあかん

6.5.2 考察

「ニセ方言」の使用について、効果を取りあげたが、アンケート調査とテキスト調査の間に大きな違いはなかった。これは、「ニセ方言」使用者の意識と実際に使われている「ニセ方言」に大きな乖離がないということである。

ただし、Twitterでの効果については、少ないテキストの中で偏りが出てしまった可能性が高い。