0312012 沖潮里
アンケート調査では「ニセ方言」を使うことでどのような効果が得られると思うかを調査している。その結果と、収集したテキストを照らし合わせ違いをみる。6.3.ではメディア別に傾向をみているが、その中でも顕著な違いがあるLINEとTwitterについてここでは取りあげる。
アンケート調査で指摘された通り、LINEでは「内容が軽い感じ」を出すために「ニセ方言」を使用しているという意識がある。収集したテキストを見てみると、4や8は「面白くなる」意識で「ニセ方言」を使っている(表2)。7はどちらとも取れるが、顔文字も併用していることから「面白くなる」ために使用していると考えられる。2や6は共通語で言うと「教えなかったんじゃないの」「なんで遅刻するんだよ!」などとなり、少し強い印象を与える。また、3も深刻な内容ではなく、これらは「面白くなる」というよりも「ニセ方言」が「内容が軽い感じ」を表していると思われる。他のものも判別はし難いが、共通語と比べてみると「内容が軽い感じ」がするものが多い。
表2 「ニセ方言」を使用したLINEの文章
時 | 相手 | 本文 | |
---|---|---|---|
1 | 2013.1 | 親しい同性の友人 | (文章)これ確定や |
2 | 2013.11 | 親しい同性の友人 | 教えなかったんちゃうんか |
3 | 2013.11 | 同性の友人 | なんや東京駅の相場が高くて探し方もようわからん |
4 | 2013.11 | 同期 | 窓際に席とったでー/マフラーと鞄置いてあるでー |
5 | 2013.11 | 同性の友人 | ええやろう |
6 | 2013.12 | 友人 | なんで遅刻すんねん! |
7 | 2013.6 | 同性の友人 | あたしヘタレやで…(顔文字) |
8 | 2013.8 | 親しい同性の友人 | 相変わらずやでぇ |
次にTwitterだが、アンケートでは「面白くなる」という意識が強いことがわかった。では、収集したテキストを見てみる(表3)。この中で「面白くなる」という意識で発信されていそうなものは5くらいで、他は「内容が軽い感じ」や「親しみを持てる」に分類される内容である。意識と実態に差があるということになる。
TwitterはLINEのように特定の相手と会話することもできるが、多くは不特定多数へ「つぶやき」として発信している。会話の中では親しみや内容を軽くするために使われる「ニセ方言」が、自分のことを積極的に発信する「つぶやき」では面白さを出すために使われていると思われる。今回のテキスト収集では「相手」という項目を設定したため、より会話に近い部分が表れたのではないかと考える。
表3 「ニセ方言」を使用したTwitterの文章
時 | 相手 | 本文 | |
---|---|---|---|
1 | 2013 | 友達 | せやな○○ |
2 | 2013.1 | 不特定多数 | あかんやつや |
3 | 2013.1 | 異性の友人 | 調布か府中ならゲーセンあるでー |
4 | 2013.11 | 異性友達 | どこに行けば会えるやろ?時間あるようでないから会えるとも限らんが… |
5 | 2013.11 | 不特定多数 | あかーん |
6 | 2013.11 | 同性の友人 | コピバン久しぶりだから不安だわさ |
7 | 2013.11 | (無記入) | そもそも言語学の先生が少ないねん…。 |
8 | 2013.11 | フォロワー | フルートは空気抵抗がないからあかん |
「ニセ方言」の使用について、効果を取りあげたが、アンケート調査とテキスト調査の間に大きな違いはなかった。これは、「ニセ方言」使用者の意識と実際に使われている「ニセ方言」に大きな乖離がないということである。
ただし、Twitterでの効果については、少ないテキストの中で偏りが出てしまった可能性が高い。