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(梅原遥子)

以下の表は、金水敏(2002)「近代語とステレオタイプ」を基に、大阪弁ステレオタイプを定義づけ、点数化したものである。また、田中ゆかり(2011)の金水をもとにしたアンケートも参考にした。なお、判断は班内での相談で行った。

◎=3点 ○=2点 △=1点 ×=0点 とする。

表2 金水敏(2002)から抽出したステレオタイプとキャラの比較

2000年代 1990年代 1980年代
平子真子 ヨシツネ 西部丸馬 ケルベロス 大山法善 久遠寺右京
冗談好き × 10
おしゃべり好き 13
けち、守銭奴 × × × × × 3
食通、食いしん坊 × × × × 5
派手好き × × × × × 2
好色、下品 × × × × 6
ど根性 × 10
やくざ、暴力団 × × × × × × 0
11 13 8 8 5

表3 田中ゆかり(2011)から抽出したステレオタイプとキャラの比較

平子真子 ヨシツネ 西部丸馬 ケルベロス 大山法善 久遠寺右京
怖い × 9
かわいい × × × × × × 0
かっこいい × × × × 3
男らしい × × × × 4
冷たい × × 10
8 7 4 0 4 4

表2のキャラごとの合計点数において、±2を誤差の範囲と見るならば、1980年代、1990年代、2000年代と3つのブロックに分けることができ、増加傾向にあると見ることができる。近年のバトル漫画は、昔のバトル漫画に比べて種族や武器・技などが複雑になり、種族や武器・技では個性になりきれていない漫画が多い。例をあげると、久遠寺右京などはお好み焼きに関連する武器や技を持っているにもかかわらず、「らんま1/2」内ではほとんど目立っていないという声もあがっている。この為、大阪弁ステレオタイプに沿ったキャラにすることで、その性格や個性を強調するという役割を担っているのではないかと考える。

更に、表2表3の中から「冗談好き」「おしゃべり好き」「怖い」「冷たい」の4つの項目を抽出してみた。

表4 金水敏(2002)から抽出したステレオタイプとキャラの比較

平子真子 ヨシツネ 西部丸馬 ケルベロス 大山法善 久遠寺右京
冗談好き(+) × 10
おしゃべり好き(+) 12
怖い(-) × 10
冷たい(-) × × 10
±0 ±0 -1 +5 -3 +1

陽気で明るいイメージである「冗談好き」「おしゃべり好き」を+、冷静で怖いイメージである「怖い」「冷たい」を-として計算。

久遠寺右京とケルベロスは+のイメージ、大山法善と西部丸馬は-のイメージ、ヨシツネと平子真子はどちらのイメージも併せ持っている二面性のキャラということがわかる。ヨシツネと平子真子が登場している「エア・ギア」と「BLEACH」は両方とも2008年、2009年と2000年代の漫画であり、それ以前のバトル漫画におけるキャラにそのような二面性を持つキャラはいないため、これも年代による変化のではないかと考えられる。また、大阪弁のような方言イメージを持たないキャラにこのような二面性を持たせるよりも、大阪弁キャラに持たせた方がよりいっそう+のイメージと-のイメージ、またその落差が強調されるため、近年のバトル漫画では、大阪弁ステレオタイプをそのままキャラに反映させることにより、そのイメージを強調させるという使われ方が見られた。

バトル漫画における大阪弁キャラのイメージは、1980年代から2000年代にかけて、徐々にステレオタイプに当てはまってきているといえる。