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(仲宥人)

1980年代~2000年代までのスポーツ漫画で使用される大阪弁が、金水敏(2002)の「大阪ステレオタイプ」に当てはまるか、またはどのような使われ方をしているか考える。

各キャラの台詞から、金水敏(2002)の大阪ステレオタイプにどの程度当てはまっているかを表にし、点数を付けた。

◎=3点 ○=2点 △=1点 ×=0点 とする。
表7 金水敏(2002)から抽出したステレオタイプとキャラの比較

・◎が複数つき、高い点数を記録したのは「おしゃべり好き」、「冗談好き」、「ど根性」であった。しかし、すべてのキャラに当てはまっている訳ではなく、当てはまるキャラと当てはまらないキャラで点数に極端な差ができている。
・すべてに共通していたのが「好色、下品」「やくざ、暴力団」の0点である。『スラムダンク』などでは「元不良」は出てくるが、スポーツ漫画内での強者・弱者は競技に勝つことによって決まるので、暴力的な描写は必要ないからだと思われる。
・岩鬼正美にのみ「けち、守銭奴」が当てはまった。しかし、破産した親のためにお金を稼ぐという岩鬼のバックグラウンドに関係しており、マイナスなイメージで使われてはいない。
・遠山金太郎にのみ当てはまった「食通、食いしん坊」も、ただ食べまくっているという訳ではなく、闘争心をむき出しにしている場面での大食いが多かったことから、こちらもマイナス要素としては作用してはおらず、むしろプラス要素と言える。
・80年代後半から90年代にかけて登場するキャラの点数が落ち込んでいるのが目立つ。お笑い要素よりも、競技自体の描写を重視された時期であったのではないかと思われる。
・2000年代での連載ではまた笑いの要素が見られ、とくに遠山金太郎や平良呉二は、「冗談好き」、「おしゃべり好き」が二人とも当てはまった。
・スポーツ漫画において、大阪ステレオタイプの使われ方は80年代から00年代を通じてマイナスなイメージは少なく、プラスイメージとして扱われていた。