(高田宗典)
今回は、1980年代~2000年代までのギャグ漫画における大阪弁ステレオタイプの変遷を調査した。
なお、大阪弁ステレオタイプは金水敏(2002)のものであるが、田中ゆかり(2011)の金水をもとにしたアンケートも参考にした。
◎=3点 ○=2点 △=1点 ×=0点 とする
表5 金水敏(2002)から抽出したステレオタイプとキャラの比較
表6 田中ゆかり(2011)から抽出した大阪ステレオタイプとキャラの比較
この表6の項目を横に見ていくと、まず言えるのは全年代を通して「食通、食いしん坊」と「やくざ、暴力団」は0点だったことが特徴的だという事である。これは、「食通、食いしん坊」については、今回調査対象とした漫画が、グルメな内容などと関連していないために点数がつかなかったからである。また、「やくざ、暴力団」に関しては、ギャグ漫画というジャンル自体が笑いをテーマにしているため、「やくざ、暴力団」はあまりに笑いとかけ離れすぎていて、漫画の内容に取り込むのに少し無理がある為だと思われた。
次に点数が付いている部分を見ていくと、全年代を通して高い点数が見られたのは「冗談好き」「おしゃべり好き」「ど根性」の三つである。まず「冗談好き」「おしゃべり好き」は、ギャグ漫画というジャンルの性質に非常に合致しているために点数が高くなったものと思われる。80年代のキャラが当てはまらないのは、シャチの長老は「ど根性」に、大亀津依奈は「けち、守銭奴」に特化した性格となっている為に、「冗談好き」「おしゃべり好き」が当てはまらなかった。また、「ど根性」に関しては、鬼塚一愛は喧嘩に、突吉こむ平は突っ込みに、ジュンは復讐に、シャチの長老は敵と戦うためにと、漫画の内容によって目的はバラバラであるが、ひたむきだったり諦めない姿勢を見せており、大阪弁話者は「ど根性」というステレオタイプは年代を通して存在するものと思われた。点数の低くなった項目に関してだが、これはキャラ自身の特徴と大きく関連していた。まず「けち、守銭奴」「好色、下品」が当てはまる大亀津依奈は、普段はかわいらしい女の子だが、お金に貪欲で、金持ちに会うと途端に寄り添うような態度に豹変する。主人公の茶魔を嫌っていたが、金持ちの御曹司と分かった途端に寄り添うようになるほどである。
このような特徴から「けち、守銭奴」「好色、下品」は年代の関係よりキャラ自身との関係が強い為に現れた特徴であると思われる。また、派手好きについては、鬼塚一愛が元ヤンキーの女子高生であることから、金髪などの派手な格好をしているものと思われ、年代との関係が強いとは言い難いと思われる。以上のことから見ると、基本となる「おしゃべり好き」「冗談好き」に付け加える形でキャラが構成されているのは年代を遡ってみても変わっていなかった。また、それ以外の項目を強調して構成されたキャラなどもおり、大阪弁ステレオタイプが当てはまらないというよりは、描く作品に合った使いやすい大阪弁ステレオタイプを利用してキャラを構成しているように思われ、年代ごとの差は見られなかった。