このページのPDFを印刷

(名執桃子)

恋愛漫画における大阪方言を使うキャラを対象に大阪方言のステレオタイプがキャラの性格に当てはまっているか、どのようにあらわれているかを1980年代、1990年代、2000年代と10年ごとに区切って調査した。

表8 金水敏(2002)から抽出したステレオタイプとキャラの比較

表9 田中ゆかり(2011)から抽出した大阪ステレオタイプとキャラの比較

上記の表を見ても分かるように恋愛漫画のキャラに表れる大阪ステレオタイプは年代ごとに差があった。その特徴をまとめる。

・冗談好き、おしゃべり好きなどといったプラス面は年代を問わずキャラの性格に表れている。
・けち、守銭奴、食通、食いしん坊などといった項目は恋愛漫画においてはこれらに関する記述が見られず、キャラの性格として表れなかった。
・怖い、やくざ、暴力団などといったマイナス面に関しては2000年代など近年では当てはまらないが、1980年代など時代を遡るとこのような性格がキャラに表れるようになる。
・年代ごとに少しずつ違いはあるが、どの年代にも大阪方言のステレオタイプを利用したギャップ効果が見られた。
・2000年代など近代、ステレオタイプのマイナス面にあまり当てはまらない原因としてマイナス面よりもプラス面である「冗談好き、おしゃべり好き」などのイメージが強くなっていることが原因の一つであると考える。

このように恋愛漫画において大阪方言ステレオタイプの使われ方(当てはまり方)には年代別に違いが見られる。これには、大阪方言に対する世間のイメージが変わって来ていることが原因の一つであると考えられる。1980年代の漫画「エリート狂想曲」の漫画内における「大阪弁はやめて!!大阪弁は嫌いなのよ!!」と言う台詞にあるような大阪方言を使っているというだけで「軽蔑」されるなどといったことは現代では全く見られず、このような点からも大阪方言に対するイメージの変化があったのではないかと考えた。