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5.3 アニメと漫画で方言イメージとキャラクターの比較

0312086 千葉 楓

大坂、熊本、沖縄それぞれ方言話者キャラクターが、アニメと漫画でどのような差異が生じているのか、金水(2002)の大阪弁ステレオタイプで定義されている8種類の項目に大阪弁キャラクター及び熊本弁、沖縄弁キャラクターの内面がいくつ当てはまるのか比較してみた。

表3 大阪弁ステレオタイプとキャラクターの比較

ステレオタイプ キャラクター名
白石蔵之介(大阪) 千歳千里(熊本) 甲斐裕次郎(沖縄)
冗談好き
おしゃべり好き
ケチ、守銭奴 × × ×
食通、食いしん坊 × × ×

上記の表から白石より甲斐の方が大阪弁ステレオタイプに当てはまることが分かった。また千歳は熊本弁話者であるが白石同様、大阪の四天宝寺中学校に在学しているが、大阪弁ステレオタイプに当てはまる項目は一番少なかった。このことから大阪弁話者である白石は方言イメージがあまり影響していないキャラクターであることがいえる。

次にアニメと漫画の方言使用頻度の比較をした表からどのような差異が生じるか考えてみた。

表4 外言の方言度数

のべ度数 名詞 動詞 助詞 感動詞 文末 文末以外
白石アニメ 133 32 27 76 5 70 51
白石漫画 140 12 48 74 0 73 47
千歳アニメ 108 18 28 64 1 74 38
千歳漫画 161 4 14 88 2 79 32
甲斐アニメ 63 20 4 25 11 26 18
甲斐漫画 70 6 7 12 8 12 12

外言を比較してみて、大きく差がところを太文字にした。白石はのべ度数であまり差がなく、名詞と動詞の数に差が出た。方言使用に差が出なかったところから、方言の使用場面はメディアミックスしても変わらないことが分かる。千歳はのべ度数の数が大きく違うが、動詞の数がアニメの方が多いことがいえる。このことから千歳はアニメ化されて方言使用度数が増えたといえる。甲斐は名詞、助詞ともにアニメの方が方言を使っていることからメディアミックされたことにより方言使用数が増えたといえる。

次に内言の比較を行った。

表5 内言の方言使用度数

のべ度数 名詞 動詞 助詞 感動詞 文末 文末以外
白石アニメ 44 12 13 26 0 26 18
白石漫画 52 4 17 24 0 25 18
千歳アニメ 18 4 8 11 0 12 9
千歳漫画 32 2 2 16 1 18 16
甲斐アニメ 9 4 0 4 0 4 4
甲斐漫画 0 0 0 0 0 0 0

白石は内言でも方言使用度数に差が出ず、外言と同じような結果が出た。千歳はのべ度数が漫画の方が多いが、方言使用度はアニメの方が多かった。甲斐は漫画が0だがアニメの方は圧倒的に方言を使用していた。

このことから作者が大阪出身であることと、大阪弁がメジャーな方言であることが影響しているのではないか。漫画の作者が意図的に心理表現では標準語を喋らせている傾向があるということが言えるのではないか。アニメにメディアミックスされることによって方言色を強くし、方言使用キャラクターに方言イメージを付与する傾向があるということが考えられた。