0312092 中村元尚
私は漫画で使用されている関西弁と実際に使用されている関西弁との比較を行った。また、漫画における方言の表記について考察を行った。
関西弁は終助詞に特徴がある。多彩であり、「~ねん」「~や」「~わ」などが主に耳にし使用されるが「~な」「~わ」「~てん」「~たん」「~やん」も使われることがある。ここで白石蔵之介が使用する関西弁の終助詞を抜き出し、円グラフにしたのが図1である。
図1 白石蔵之介の関西弁総セリフ数140件のうちの文末表現(度数)
もっとも多く使用されているのは「や」である。文末表現の全体の半分近くを占めていることがわかった。また、漫画における表記の差が見受けられた。調音記号に母音の小文字を使用している場合と使用していない場合がある。漫画において使い分けされていたのでそれはなぜか考えた。母音の小文字が使用されている例のうちもっとも多いのは、「え」だった(図2)。小文字の「お」は使用されていないことがわかった。
図2 「テニスの王子様」に現れた長音部分の母音小文字(度数)
「でぇ」と「で」で表記を分けるのか漫画のそれぞれのシーンを見ていったときある共通点が見つかった。「でぇ」と表記する際、なるべく強調したいときや誰かを諭すようであることが漫画の絵から読み取れた。それに対して拗音を使わないセリフは独り言やつぶやくように言っているように思える。
標準語と違い否定形の種類が豊富である。「へん」「ちゃう」が主に用いられる。
「あらへん」という例で「へん」を使用しているが「ある+へん」というのがわかる。また、「へん」が付くことで音韻的な変化が現れることがある。「来る」に「へん」がつくと「きいへん」となる。この他にも「けえへん」「こおへん」などの種類がある。「する」に「へん」がつくと「しいへん」となる。この他にも「せえへん」などの種類がある。音韻だけでなく形も変化する場合も関西弁には多々ある。「ある」は「あらん」「ありひん」、「来る」は「きいひん」「こん」、「する」は「しいひん」などがある。漫画において否定形は8件確認された。台詞では「せぇへん」を使用しており、拗音を付け足した方がより否定形を強調させているように思える。
「アカン」、「ホンマ」、「ほな」、「めっちゃ」などの語彙がある。また、若者言葉として浸透している「えぐい」という言葉があるがこれは「えげつない」から来ており、関西弁である。方言の多くは終助詞などの変化が多いがこのように関西弁は終助詞だけでなく語彙の変化も見られる。関西弁には多彩な表現が存在し、「とても」という意味で関西でも一般的に多く使われるのは「めっちゃ」だが「ごっつ」も使用される。さらに「めっちゃ」にも「めっさ」や「めちゃ」「めちゃんこ」などの種類が存在する。漫画においては「めっちゃ」と「ごっつう」を使い分けていることがわかった。「ごっつう」の方がやや強い印象が与えられている。また、「えげつない」という語彙も確認された。
この他に敬称にも特徴がある。母のことを「おかん」と読み、方言として特別な愛称で呼ぶことがある。漫画においてもこれが確認できた。白石蔵之介は「遠山金太郎」を呼ぶ際に敬称を変えて呼ぶ時があった。敬称をわざと変えることで相手により強調して意志を伝えることができる。
比較をしていて『テニスの王子様』はリアルに関西弁を反映している部分が多いようである。それは作者が関西出身であるため他の方言よりも詳しいからであると考えられる。また、漫画において内言と外言で方言使用に差異が起こるのも作者が意図的に行ったものと考えられる。「駄目」と「アカン」の使い分けがみられたが標準語はすべて心理表現であった。標準語を使用することで読者と同じ視点で読むことができるような考慮があると考えられる。
今後の課題としては他の漫画においてどのような関西弁を使用しているか、他のキャラクターを調べ、漫画においての関西弁使用度の差をみていく必要があると考える。