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6.3.方言一貫キャラのステレオタイプの比較・分析(榎本拓朗)

方言スイッチキャラと比べ、喜怒哀楽を示すときに本当に差が出にくいのか、またステレオタイプの現れ方と作中の方言一貫キャラの特徴について考察していく。

6.3.1.『君のいる町』についての考察

作品にあたった限り、男性キャラは方言一貫キャラ、女性は方言スイッチキャラか、一貫していない(方言を使用しない)キャラに分かれた。ヒロインである枝葉柚希その妹の枝葉凜を除き全員が広島出身キャラとなっている。広島出身キャラは作品舞台と使用方言が同じであり、田中(2011)によれば、「中国・九州・四国型」:「出身地方言」が非常に好きで、「家族」「同郷友人」に対する「出身地方言」使用率が高い。と述べられている。この作品は、表2の通りほぼ主要キャラしか登場しておらず、家族、同郷友人によって物語が進んでいると考えられ、作者も同じ広島県出身とされるためこのように出身地方言の使用率が高い結果が出たのだと考える。

図1.桐島青人のセリフ中の喜怒哀楽(単位:個)

図1.桐島青人のセリフ中の喜怒哀楽(単位:個)

表2.ステレオタイプとの比較

表2.ステレオタイプとの比較

「喜」「哀」が少なすぎるわけではないため、あまり差が表れているわけでなく、方言の使用がほぼ均等となる結果となった。また、方言ありと方言なしでもほぼ同じであった。ラブコメの少年マンガという特徴から、主人公である桐島青人をステレオタイプにしっかりと固定し、周りに方言使用者で固めることによって、ヒロインの枝葉柚希の可愛さをより引き出す要素として主人公が方言一貫キャラを担ったものであると考えられる。

6.3.2.『坂道のアポロン』についての考察

こちらは、主人公の一人である西見薫と深堀小百合を除き調査した中では全員が長崎出身のキャラとなっている。こちらも表1でも述べた、田中(2011)によれば、「中国・九州・四国型」の特徴が表れている。

図2.川渕千太郎のセリフ中の喜怒哀楽(単位:個)

図2.川渕千太郎のセリフ中の喜怒哀楽(単位:個)

表3.ステレオタイプの比較

表3.ステレオタイプの比較

こちらは、文系少年=ひ弱な印象のある西見薫のキャラを立たせるために、沖(1986)によれば九州弁は「豪快で、素朴で、昔の言葉を使って、なまりがある」としている、男らしさの象徴の川渕千太郎をステレオタイプに当てはめることで、より方言を使わないもうひとり主人公を目立たせるためであると考える。

6.3.3.まとめ

方言一貫キャラは、喜怒哀楽での方言の使われ方に極端な差があることはなかった。また、ステレオタイプもほぼ同じという結果となった。やはり、今回の場合、『君のいる町』の主人公、桐島青人と『坂道のアポロン』の主人公、川渕千太郎の両キャラとも作者の出身地、作品舞台の影響、ステレオタイプをしっかりと反映させており、作品舞台と同一の方言によって両キャラのステレオタイプをより出すことによって、たくさんの共通語キャラの中の方言キャラとは逆に、方言を使わないキャラ『君のいる町』のヒロイン、枝葉柚希と『坂道のアポロン』のもう一人の主人公、西見薫をより際立たせるための方言一貫キャラ、方言キャラの同一方言地域の使用であると考えられる。

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