方言を話す人々への意識

国文学科三年 吉田 悠亮


方言を話す人々への意識調査




1.はじめに


私たちは、三川町の人々が自分たちの話す「三川の方言」に対してどのような考えや見方を持っているのかということを中心に調べました。



2.この調査で使用した調査項目:以下、面接で用いた「4-5 方言意識」です。


B.1:地元・三川町の方言を、後世に残しておきたいと思いますか?

1残しておきたい 2どちらかというと残しておきたい 3どちらともいえない
4どちらかというと残しておきたくない 5残しておきたくない

B.2:なぜそのように思うのか、理由をお答えください。(理由)



3.分析対象データ概要


今回の調査では総勢105人の方々から回答を得られた。

若年層:13人⇒男性7人、女性6人。
中年層:62人⇒男性は43人、女性は19人。
高年層:30人⇒男性が22人、女性は8人



4.結果報告:質問の結果を世代別で見てみる。


5.2.B1.B2の質問の結果:方言を後世に残したいと思うか?


*ここではB.1の質問の回答の選択肢で、
1残しておきたい2どちらかというと残しておきたい、を選んだ人々を
「残したい派」

4どちらかというと残しておきたくない5残しておきたくない、を選んだ人々を
「残したくない派」

3どちらともいえない、を選んだ人々を
「どちらともいえない派」

というように三つにまとめて考えた。

この質問に対し、若年層の有効回答者数は12人であった。その12人中「方言を残したい」と思う人は11人となり、これは回答者の92%にもなる。理由として最も多いのが「方言には歴史があるから」4人36%。二番目が「方言はその土地独自の文化だから」「方言に親近感がある」という理由でそれぞれ3人27%であった。理由を見て伝統・文化・親近感といった方言に対する好意的なものが多いこと、そして、「残したくない」と考える人が全く居なかったことからも若年層の方言に対する好感は高いように思われる。

次に、中年層での回答者数は62人、その内の有効回答者数は60人であった。
60人中、「残したい」は45人で75%、「どちらともいえない」が14人で23%、「残したくない」は1人で2%であった。中年層でも若年層と同じく、方言を残したいと考える人は多い。その理由も「方言は独自の文化」(1位38%)、「親近感がある」(2位27%)という方言への好感を表すものが多い。中には「方言でしか伝えられない意思がある」(3位10%)という理由もあり、若年層よりも長く方言に接し、使用してきた中年層ならではの理由ではないかと思われる。中年層では「どちらともいえない」(14人23%)といった意見や「残しておきたくない」(1人2%)といった意見も見られた。「どちらでもいい」という意見で最も多かったのは「時代・世代によって言葉は変化していく」というもので、これは9人の65%にあたる。メディアを通じて地方に流入してくる共通語により、若い世代で方言が話されなくなってきた、という意見を私も多くの訪問先で聞いたが、こういった回答にもその影響が見てとれる。

そして、高年層であるが、回答者30人中、有効回答者数は27人であった。その内、方言を「残したい人」は20人で74%、「どちらでもいい」が4人で15%、「残しておきたくない」は3人で11%であった。残しておきたいと考える人の理由で上位に来るのは、やはり親近感(6人30%)や歴史(3人15%)・文化(4人20%)である。「どちらでもいい」という人の理由としては先程も出てきた「時代・世代によって言葉は変化していくから」が3人75%と多く、もう一人の理由は「方言に特に愛着はない」というものであった。また、「方言を残しておきたくない」という人は3人15%となった。3人ともその理由として挙げたのも「方言に特に愛着はない」であった。
結果を振り返ってみると、各世代で方言を残したいと思う人の割合は若年層が92%、中年層が75%、高年層では74%とどの世代でも過半数を上回る結果となった。このことは、三川町の人々が自分たちの話す方言に強い愛着を持っているということをうかがわせる結果ではないかと思う。

佐藤和之・米田正人「どうなる日本の言葉―方言と共通語の行方」
1999年大修館書店