国文学科3年 佐藤良美
気づかない方言とされる言葉の使用相手による使用状況の差から気づかない方言を分類し、それぞれの方言の特性を見る。
図1.「(それぞれの相手)に対して何といいますか?」への回答から気づかない方言の回答を抜き出したもの
(オワスは地元の医者2(n=95)、東京の大学生2(n=96)、それ以外表記のないものはn=102)※「ハメテ」の使用は0であり、そのためグラフには出ていない。
上のグラフより使う相手の違いからそれぞれの方言を次の4つに分類します。
(1) 相手による変化がほとんどない言葉:「犬カラ追いかけられた」「六時デ会いましょう」
「犬カラ追いかけられた」「六時デ会いましょう」は家族にも地元の医者にも東京の大学生にも同じくらい使われており、共通語を話す相手に対しても使われていることから典型的な「気づかない方言」であるといえます。
(2) 丁寧に話す相手には使われない言葉:「ウダル」「ダマッテレ」「オワス」
「ウダル」「ダマッテレ」「オワス」は家族に対してはある程度使われていますが、地元の医者、東京の大学生に対しては答えた人が少なくなっていて、三川の方言を話す相手であっても丁寧に話す対象である地元の医者にはほとん ど使われていません。これらの言葉は、「共通語を話す相手にも気づかずに使う」という「気づかない方言」の決まりからは外れますが、方言ということを考えて使っていないわけではないと考えれば、広い意味では「気づかない方言」といえるのではないかと思います。
(3) 共通語を話す相手には使われない言葉:「聞いたトキある」
「聞いたトキある」は家族、地元の医者に対して使う人に比べて東京の大学生に対して使うと答えた人が少なくなっていて、方言として意識されている語形であると考えられます。
(4) 段階的に変化している言葉:「ツケル」「カケラレタ」
「ツケル」「カケラレタ」に関しては家族>地元の医者>東京の大学生と段階的に使用する人が減っています。これは、丁寧に話すときには使わないという人と方言であることを意識して東京の人には使わないという人がいるということだと思われます。「ツケル」に関しては東京の大学生に対しても使うという人が3割近くいて、方言であることに気づいていない人も多いのではないでしょうか。
篠崎晃一(2007)「気付かない方言文法」『日本語学』26(11)明治書院p224~229