2003年度
先輩たちの卒業論文のテーマと要旨の紹介

日本大学国文学会『語文』第百十九輯 掲載論文

北山紗弥子卒業論文平成15年度鈴木賞
消え行く富山弁と、使われ続ける富山弁―マスメディアとの関係性から―
設楽起子卒業論文
「現代女性タレントの話し方―談話分析とその印象調査―」

北山紗弥子
消え行く富山弁と、使われ続ける富山弁―マスメディアとの関係性から―

今回の調査では、富山弁関連本6冊から20語を選定し、富山県に在住、または出身の10代から80代を対象に多肢選択式アンケート調査を行った。そして、「使用度」「認知度」「周囲使用度」の3つの観点から、20語の今後の方向性を検討した。この分析で、今後消えて行くと思われる語と、残って行くと思われる語の特徴を確認した。この「消え行く富山弁」の特徴は、「ⅰ.名詞である。ⅱ.共通語の言い方で、簡単に済ませられる。ⅲ.共通語形とは全く違う形をしており、明らかに方言形だとわかる。ⅳ.同じ意味の方言形が存在し、一方の語が存続する語の条件を満たしている。」であり、「使われ続ける富山弁」の特徴は、「Ⅰ.共通語と語形が似ている。Ⅱ.気づかない方言である。Ⅲ.品詞が助詞・助動詞・感動詞・接続詞などである。Ⅳ.言いかえるとニュアンスが変わってしまう。」である。 また、「キトキト」と「マイドハヤ」という語に関しては、マスメディアィアの影響性が確認された。

設楽起子
現代女性タレントの話し方―談話分析とその印象調査―

「女性タレント」と一言で言っても、やはり様々なタイプの女性が存在する。そして、それぞれに自分のキャラクターに似合った話し方も持っているのである。本稿の目的は、現代女性タレントの話し方を探り、それらが聞き手の人々にどのような印象を与えているのかを調査することである。ここでは、10代後半から20代前半の女性タレントを選出し、筆者自身による談話分析と学生を対象とした印象調査による調査データの両面から検討した。その結果「笑い」や伸ばし音を含む発話率が「評価」や「活動性」といった印象評定に深く関わるものであることを確認した。

本郷郁
富山の気づかない方言と伝統的方言の使用度・理解度調査―年代差・地域差を中心に―

本稿では、富山県方言語彙を例として、どのようなものが「気づかない方言」であるのかを使用度・理解度と使用者意識の両面から検討すると共に、伝統的な方言の使用度・理解度の現状を調査した。また、集計結果は「年代」「言語形成期の出身地」の点から分析を行った。
集計結果を方言系と共通語形とで比較した結果、次のような条件に該当するものを、「気づかない方言」の候補として導き出した。
①方言形のほうが使用度・周囲の使用度が高く、共通語形のほうが理解度・周囲の使用度が低いもの。
②方言形のほうが使用度・周囲の使用度が高く、また理解度・周囲の使用度が低いもの。
③使用度・理解度が共通語と同様の動きをしているもの。
上の②は、年代や出身地による影響が考えられるものの方言形のほうが定着度の高いものである。また、③は共通語と同等にみられている、方言・共通語といった区別の意識が低いものと言える。
しかし、「気づかない方言」であるかどうかは、使用者がどのように意識しているかが判断の要であり、これらの条件に該当した方言形=「気づかない方言」とは言えない。あくまで、「気づかない方言」の候補を見つけ出す一つの方法として提示する。 ある地域独自の言語形式や用法でありながら、話し手が方言と意識せずに使っていることばは、「気づかない方言」と呼ばれている。私の出身地である富山県の「気づかない方言」が、佐藤亮一(2002)に「富山県人が共通語だと思っている方言ランキング」として紹介されていたので、引用すると、「だら(馬鹿)」、「だやい(だるい)」、「なーん(いいえ)」、「かたがる(傾く)」などである。これらは、富山県の伝統的・代表的な方言として、方言集等に収められているにもかかわらず、共通語だと思っている人もいると知り驚いた。
そこで今回は、富山県の「気づかない方言」を探ると共に、伝統気な方言の使用度・理解度の現状を調査することにした。

及川瞳
好感度から見た名古屋方言―使用度・認知度・理解度―

大澤未央
若年層における日本語表現―若者ことば・流行語―

松本満
『語学力』の現状―ことわざ・慣用句を中心とした理解度調査―

水戸とも子
若年層の日本語異表記―ケータイ・メールを中心に―

鈴木雄一
村山方言と庄内方言の差異―使用度・理解度・意識調査―

山本一晶
静岡県とその隣接地域における言語の関係について―類似と影響―

横山暁子
八十年代から見る日本のキャッチコピーの特徴と移り変わり