2021年度
先輩たちの卒業論文のテーマと要旨の紹介

日本大学国文学会『語文』第百七十三輯 掲載論文

清千夏卒業論文令和3年度国文学科卒業論文優秀賞
打ちことばにおける三点リーダの役割—Twitterと現代日本語書き言葉均衡コーパスを比較して—

日本大学国文学会『語文』第百七十一輯 掲載論文

中對健人現代日本語学講義1
ご当地キャラにおける「方言」活用

宮原千里
行政の言語サービス

全国の県庁所在地と指定都市の52市の公式HP、観光サイト、ハザードマップの多言語対応を調査。公式HPと観光サイトでは人手による翻訳と機械翻訳を分けて集計した。
行政規模別に結果を比べると、規模の大きい自治体は多言語化が進んでいることがわかり、ハザードマップでは多言語化に積極的な自治体とそうでない自治体がはっきりした。
公式HPでは行政規模が大きい自治体のほうが人手による翻訳を行う割合が高いが、観光サイトでは行政規模に関係なく、人手による翻訳を行うサイトが多かった。使用言語は日英もしくは日英中(簡)韓の組合せが多く、さらに必要な言語はそこに追加する場合が殆んどで、追加言語は在留外国人数、観光サイトの場合は訪日外国人数をもとにしていることが明らかになった。
新型コロナウイルス感染症関連については厚生労働省HPを軸に、大きく分けて3つのアイテム(ウイルスの特徴の情報、ワクチン接種の情報、感染症の影響による生活支援情報)の情報発信における多言語対応を調査。日英中韓にさらに在留外国人数をもとに使用言語を複数選んでいる場合が殆んどで、やさしい日本語の使用もあった。ほかのアイテムではやさしい日本語の使用は多くなく、今後広く浸透していくことを願う。

松井遼馬
90年代ヒップホップの歌詞分析-代表3組の比較から-

1973年8月11日、ニューヨーク、ウエストブロンクスで誕生したと言われるヒップホップ。それまで日本ではヒップホップの文化がほとんどなく、世間に浸透していなかったが、1990年代からヒップホップが爆発的に流行し始め、数多のヒップホップグループが日本から生まれた。本稿ではその中でも代表的な3グループを取り上げ、歌詞を提供しているサイトや歌詞カードなどを参照に歌詞データを入力し、それらを形態素解析ツールや先行研究などを参考に品詞比率、頻出語、特徴語彙などを抽出して各グループの日本語ラップ界における特徴を調査した。結果的にそれぞれ違った特徴がみられ、大まかにではあるが90年代を代表する3グループの日本語ラップ界での立場などが明確になったのではないかと考える。

清千夏
打ちことばにおける三点リーダの役割—Twitterと現代日本語書き言葉均衡コーパスを比較して—

打ちことばにおける三点リーダの役割を調査するため、現代のコミュニケーションツールであるTwitterと、書きことば、ブログの打ちことばの一般的な資料である現代日本語書き言葉均衡コーパス『中納言』を用いて三点リーダの付与された文をそれぞれ約300件収集した。分析は属性による出現差や付与位置、三点リーダに付与された文末記号、直前の単語の観点で行った。Twitterでは句読点などによる亜種にも注目した。その結果、出現した三点リーダは符号的用法・記号的用法の大きく二つ、更に六つに分類することができた。その中でも文末記号が表現する感情を強調、または緩衝する役割は打ちことばでしか見られなかった。また無言や言いさし表現など従来述べられてきた役割もある一方で、これまで言及されてこなかった、言い切る形の文章において余韻や含みを持たせる用法も多数見ることができた。他にも三点リーダは文末に付与しやすい、強い口調の文章には付与しないといった特性が見られた。

武末文壱
『ジョジョの奇妙な冒険』のオノマトペについて

静止した文字と絵のみで表現する漫画においてオノマトペは重要な役割を果たしていると考えられる。数ある漫画の中でも特徴的なオノマトペが使用されることで有名な『ジョジョの奇妙な冒険』を調査するため、1巻から5巻までに登場する全2469個のオノマトペを抜き出し、場面・動作・キャラクターの3つの観点で分析を行った。その結果、使用頻度の高いオノマトペには用途の広いものと限定的なものの2種類があり、後者の方がより『ジョジョの奇妙な冒険』特有のオノマトペであるといえることが分かった。また、オノマトペで使われる強調表現である促音や感嘆符の内感嘆符はあまり使われず、その代わりに母音を使用した長音表現によって強調する傾向が強いことが分かった。

中島彩香
NHK全国学校音楽コンクール課題曲の歌詞分析

本稿は現代社会の子供像や社会の変化が歌詞にどのような影響を与えているのかを明らかにするため、NHK全国学校音楽コンクールを対象に語彙素・品詞比率・名詞の意味などを開催年・校種ごとに分析した。
高等学校・中学校・小学校の順で豊かな語彙素の使用が行われ、高等学校は話し言葉的文章で「動き描写的」な文体的特徴を持つ一方、小学校は書き言葉的文章で「ありさま描写的」な文体的特徴を持っていることがわかった。また、名詞の意味では「学校の荒れ」が話題となった1980年代からそれまで上位に見られた「天地」に関する名詞の使用が下がり、代わりに「心」に関する名詞が多く使用されるようになっていた。
このことから、現代社会の子供像や社会の変化が歌詞の文体や使用される語彙素に影響を与えているということが判明した。

菅流光河
『スーパー戦隊シリーズ』のネーミング

日本の特撮番組である『スーパー戦隊シリーズ』で、どのようなネーミングがされているかについての分析を行った。戦隊の名前、戦隊ヒーローの名前、変身前の名前、使用する武器の名前、必殺技の名前を調査対象とし、文字数、文字種、語種、頻出語彙、漢字などをみていった。
戦士名が片仮名で構成されているのは昔も今も変わらないが、そのまま番組名にもなる戦隊名は昭和期にはしっかりと決まった型が無くかなり揺れていたことが今回の調査でわかった。また、戦隊名、戦士名、必殺技名、武器名のいずれも昭和より平成で文字数が多い傾向にある。語彙素には小学生が魅力を感じる外来語や、外来語のような印象を与える片仮名が多く表れていた。性別による比較では、必殺技名と武器名の文字数にあまり違いが見られず、男性戦士と同じ武器を扱い同じ必殺技を繰り出すことができる、戦う強い女性戦士が活躍していることがわかる。変身前の名前にはキャラクターの性質や色を連想させる漢字が使用されていることがわかった。

井上竜一
ベストセラー小説のタイトル分析

ベストセラー小説のタイトル分析を行い、文庫総合部門、単行本・文芸部門、新書・ノベルス部門の3つのジャンルに分けてベストセラー小説のタイトルにはどのような特徴があるのかについて調査した。結果、文庫総合部門は文字数の平均値は8.5文字、単行本・文芸部門では7.92文字、新書・ノベルス部門では19.52文字であり、文庫総合部門、単行本・文芸部門では漢字が一番使用されているが、新書・ノベルス部門では数字・アルファベット・記号が一番使用されており、漢字は2番目となった。「日本語書籍タイトルの精神的構造の分析」によれば日本語書籍タイトルの文字数は11字前後、構成する文字は漢字がほとんどという結果なので、ベストセラー小説のタイトルの特徴は文庫総合部門、単行本・文芸部門はやや文字数が少なめで漢字の使用率が高く、新書・ノベルス部門では文字数が多めで数字・アルファベット・記号の使用率が高いという結果になった。

間下隆太
特撮3シリーズ主題歌の歌詞分析

本稿では、特撮3シリーズ(ウルトラマンシリーズ・戦隊日ヒ―ローシリーズ・仮面ライダーシリーズ)の主題歌96曲を対象とし、UniDicを使用した形態素解析ツールであるWeb茶まめを用いて語彙の分析・比較を行った。また調査対象の放映開始年から昭和と平成でわけそれぞれの結果の比較を行った。特撮3シリーズとも昭和から平成に移るにあたり主題歌の歌詞から「特撮らしさ」というものが減少していることがわかった。シリーズごとに減少の傾向に特徴があり、その中でも特に「仮面ライダーシリーズ」では、強く減少傾向が表れていた。頻出してくるワードも「仮面ライダーシリーズ」らしさを強く反映したワードから一目で「仮面ライダーシリーズ」の主題歌とわからないワードが頻出するようになっており、またそのワードからは、自身の行動で何かを実現していくというメッセージ性を感じさせるものに変化している。という特徴をみることが出来た。

日本大学文理学部国文学科田中ゼミ集合写真