2006年度
先輩たちの卒業論文のテーマと要旨の紹介

日本大学国文学会『語文』第百二十八輯 掲載論文

山西由里子卒業論文平成18年度鈴木賞
女子大学生の書き言葉コミュニケーション媒体差表現の男女比較から
今井しほり卒業論文
アイドル歌手の歌詞に見られる性差

日本大学国文学会『語文』第百二十九輯 掲載論文

上野亜希卒業論文
初対面の大学生の談話分析―笑いが及ぼす影響について―

岡本良子
日本の漫画におけるオノマトペの日英比較

日本の漫画にみられるオノマトペを日英語の両面から分析した。 少年漫画と少女漫画の2つのジャンルから各5作品30ページを対象とし、そこに現れたオノマトペの性質から日本語オノマトペの英訳の大まかな傾向をつかもうとした。
まず少年・少女漫画に現れる日本語オノマトペを分析した。そのオノマトペが辞書に記載のある、ある程度決まった形のものなのか、そうではなく全くの作者のオリジナルのオノマトペなのかを分類し、少年・少女漫画におけるオノマトペの性質をみた。 次に、少年・少女漫画のなかで頻出のオノマトペを挙げた。これは、全体のオノマトペを行動系、物音系、感情・雰囲気系の3系統に分け、その系統の中からそれぞれの頻出オノマトペを出していったものである。各系統でみられた特徴から、日本語から英訳される時の揺れをみた。
最後に全体から少年と少女漫画の比較を行い、全体から見た英訳においての揺れの傾向をみた。

今井しほり
アイドル歌手の歌詞に見られる性差・変遷

現在ではアイドル歌手という概念が薄れてきており、アイドルといえば女性、特にグラビアに出ている女性などを指すことが多いが、アイドル全盛期と呼ばれた1980年代には女性だけでなく男性アーティストにもアイドル歌手と呼ばれた人たちが居た。アイドル歌手と呼ばれたアーティストの歌詞にはどのような特徴・違いが見られるのか、期別・男女別に延べ/異なり語数、頻出語彙、品詞、語種、名詞分類の観点から比較分析を行った。性差では男性アーティストは外来語が多く女性は和語の使用が多いという結果が見られ、その違いに関連すると考えられるものとして延べ/異なりや品詞分類の結果にも差が見られた。また、期別では語種比率、延べ/異なり値、名詞分類に差が見られ、中でもアイドル全盛期と呼ばれた80年代には他の期と違う傾向が見られた。

山西由里子
女子大学生の書き言葉コミュニケーション―媒体差表現の男女比較から―

本稿の目的は、「手紙」としての性格を持つ、便せん・はがき・携帯メール・パソコンメールを使用した書き言葉コミュニケーションにおける、女子大学生特有の行動とはどのようなものであるかを知ることにある。今回、アンケート調査・ロールプレイ調査の二面から、これを調査した。
アンケート調査の結果から、女子は男子より便せん・はがきに対して好印象を抱いている項目が多かった。その証のように、今回行ったロールプレイ調査に提出された女子の便せんやはがきには、カラフルな文字色・手書き絵の使用・用紙の変形など、さまざまな装飾技法を駆使し、文面を彩ったものが多数見られた。全ての媒体においてバリエーション豊かに各種記号の使用や英語使用が多いことも女子に見られる行動であることを確認し、女子は使用する媒体に合わせて様々な装飾を楽しんでいるようだ。

田中裕一
場面の変化における褒め言葉の印象調査

トーク番組における敬語の使用状況を調査することで、敬語の現状をみると同時に、世間の敬語に対するその影響性を読み取っていくことを目的とした。「テレフォンショッキング」と「徹子の部屋」に出演した30代の人物を対象に、尊敬語・謙譲語・丁寧語・美化語の使用について調査を行った。分析では、男女比較と職業比較の二つの方法をとり、番組内でそれぞれの比較を行った後、番組間での差を同じように比較・分析をした。職業比較では、芸能人の専門分野(お笑い、役者など)に沿って発話者を分類し、職業的な特徴や違いをみていった。結果として、男女比較・職業比較ともに、尊敬語・謙譲語の使用が多いと丁寧語・美化語の使用が少なく、尊敬語・謙譲語の使用が少ないと丁寧語・美化語の使用が多くなるということがわかった。また敬語の誤用は、敬語使用が多い属性ほど誤用も多かった。

上野亜希
初対面の大学生の談話分析―笑いが及ぼす影響について―

自分は褒めているつもりでも相手には褒め言葉として伝わっていないことがあると思った。日常生活における褒め言葉は、相手やその場の状況などによって受け取り方が異なるであろう。本研究の目的は、「褒め言葉」の捉え方の差は何によって生まれるかという疑問を調査するものである。調査方法はアンケート調査を行った。
本稿は褒められる側の性別による差と年代による差、大きく分けて2つの観点から検討している。同じ褒め言葉を言われた時の、性差や年代差を5段階評価の印象度によって比較・分析した。
回答者の属性による差では、性差はみられたものの、年代による差はあまりみられなかった。褒める側の属性・褒め言葉による差はある程度はっきりした差が出た。

松村里枝子
日本の歌謡曲におけるモーラと音節

この卒業論文では日本でその年代に流行った歌謡曲をモーラと音節という観点から分析したものである。
言語にはモーラ言語や音節言語という区分の仕方があり、日本語はモーラ言語、英語は音節言語といわれている。では日本語は何をもってモーラ言語といわれるのか。
日本語では俳句や短歌を5・7・5(・7・7)というリズムを基本として作る。そのとき二重母音の後半部分(あい)、長音の後半部分(あー)、撥音(ん)、促音(っ)などの語頭に立たない自立語の低い音(特殊拍、特殊モーラと言う)も、単独で音節を形成する「ま」や「り」などの音(自立拍、自立モーラと言う)と同様に1つと数えている。例えば「か/ー/さ/ん/が」も「う/め/の/は/な」も同じ5モーラと数えられるのである。これをそれぞれ音節単位で数えると「かー/さん/が」の3音節と「う/め/の/は/な」の5音節ということになるのである。しかし、日本語では前者のモーラ単位を基本として数えることが原則となっており、それ故日本語はモーラ言語であるといわれるのである。
また、日本語がモーラ言語であることは、歌謡曲の楽譜の音符に当てられる歌詞がモーラ単位であるということからもわかる。一方音節言語である英語の歌謡曲では1音符に対して1音節が当てられているのである。
前述したように日本語はモーラ単位を基本としたモーラ言語である。しかし歌謡曲における日本語は純粋なモーラ言語といえるだろうか。それを検証し、経年的な変化を観察したのがこの卒業論文である。

川田千裕
お笑い芸人の「コント」における談話分析―ラーメンズとその他のお笑い芸人の比較―

本論は「コントにルールはあるのだろうか」についてラーメンズを中心とし、コントのみを演じるお笑いコンビであるアンジャッシュ、エレキコミック、ドランクドラゴンとの比較によって調査をしたものである。対象コントは爆笑オンエアバトルのDVDに収録されているものを使用した。この調査により、性別・年齢によっておもしろいと感じるコントには特徴があるということがわかった。また、性別・年齢関係なく楽しめるコントは、
・話題による繰り返し表現
・繰り返し表現を利用したツッコミ
・速いテンポ
・ストーリー性
という特徴を持つコントであるという結果が出た。

横田友子
絵本における文体分析―絵本タイプによる特異表現と偽装方言の観点から―