2025年度
先輩たちの卒業論文のテーマと要旨の紹介
五十嵐祥太
少年漫画に登場する関西弁キャラクター
2010年から2024年に『週刊少年ジャンプ』に連載された作品に登場する関西弁キャラクターの分析を行なった。
関西弁キャラクターの非標準語使用率は、平均値が約22%で、男性キャラクターが約22%・女性キャラクターが約26%と女性キャラクターの非標準語使用率が高いことがわかった。出現した語彙は上位に文末表現と人称詞が出現しており、漫画における関西弁が役割語的な要素を含んだ語であることが伺える。キャラクターの具体的な属性については、従来の古典的な関西弁キャタクターに加え、1980年代の「マンザイ・ブーム」の影響を受けた新たなタイプの関西弁キャラクターが登場しており、関西弁キャラクターの属性が多様化していることがわかった。
荒木楓花
家庭内における親の呼称
―大学生とその親世代の比較研究―
家庭内における親に対する呼称に着目し、大学生世代とその親世代を比較することで、呼称選択の実態と背景にある規範意識の世代差を明らかにすることを目的とした。調査は、大学生世代・母親世代・父親世代各62名を対象としたアンケート調査と、大学生とその両親から成る5家族へのインタビュー調査を組み合わせた混合研究法により実施した。
分析の結果、親世代は幼少期に「お母さん」「お父さん」などの呼称を用いるよう明示的な指導(呼称教育)を受けた経験が多い一方、大学生世代では呼称に関する直接的な指導経験が少なく、場面や関係性に応じて柔軟に呼称を選択する傾向が見られた。また、質的分析からは、親世代では呼称教育が家庭内規範として強く意識されているのに対し、大学生世代では同輩集団や学校環境を通じて間接的に規範が形成されている実態が明らかとなった。以上より、親に対する呼称は家庭内で完結するものではなく、世代ごとに異なる社会的規範のもとで再構築されていることが示された。
山田理央
三大コンビニエンスストアにおけるスイーツのネーミング分析
コンビニエンスストア大手三社(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン)で販売されているスイーツ商品名を対象に、ネーミングに見られる言語的特徴を明らかにすることを目的とした。調査対象は、特定時点に各社の公式ホームページに掲載されていたスイーツ商品全202品である。
分析は、商品名の文字数、使用されている文字種、頻出語、オノマトペの使用状況という観点から行った。その結果、三社間で商品名の平均文字数に大きな差は見られなかったものの、セブンイレブンでは比較的文字数が多く、ファミリーマートおよびローソンでは簡潔な商品名が多い傾向が確認された。また、文字種については、洋菓子では片仮名、和菓子では平仮名や漢字の使用割合が高く、商品ジャンルによる違いが明確に表れていた。
さらに、オノマトペの分析からは、セブンイレブンでは限られた語要素を中心に反復・派生させる使用が見られたのに対し、ファミリーマートおよびローソンでは、一語あたりの出現回数が低く、複数の語が分散して用いられていることが分かった。
以上の結果から、コンビニスイーツの商品名には、共通した基本的な構成が見られる一方で、企業やジャンルによって語彙や表記の選択に違いが生じていることが明らかとなった。
酒井咲蘭
首都圏生育の大学生における打ちことば
―LINEを対象とした分析―
首都圏で生育した大学生によるLINE上の1対1のテキストコミュニケーションを対象に、談話の性質および絵文字・スタンプの使用実態を分析した。LINEのトーク履歴を目的のための談話とするタスク談話と、目的を持たず、雑談が中心となる非タスク談話に分類し、それぞれにおいて絵文字の種類別使用傾向、スタンプの使用頻度、ならびにスタンプが談話内のどの位置で用いられているかについて検討を行った。
LINEではタスク談話・非タスク談話の別にかかわらず、短いメッセージの連続によってやり取りが構成される傾向が確認された。特に非タスク談話では、情報伝達よりも感情の共有や関係維持を目的としたやり取りが多く、感情や反応を表す絵文字が積極的に使用されていた。一方、スタンプは談話の終了場面で多く用いられ、会話を締めくくる役割を担っていることが明らかとなった。また、スタンプ使用には顕著な個人差がみられ、特に女性話者において使用頻度のばらつきが大きいことが確認された。
首都圏生育の大学生のLINEにおける絵文字やスタンプの使用には、感情表現を補助する機能を担っていることがわかった。
久保田真央
山岳観光地の言語景観
―高尾山と御岳山を比較して―
東京都八王子市の高尾山および東京都青梅市の御岳山を対象に、掲示物について、使用言語種、使用言語数、言語の組み合わせ、設置場所、設置目的の観点から調査・分析を行った。その結果、掲示物の設置場所や設置目的によって言語状況に差異が認められた。また、全体を通して、御岳山と比較して高尾山のほうが、より多言語対応が進んでいることが明らかとなった。両地域に共通して、観光庁(2014)のタイプAに分類される禁止・規制を促すサイン群は多言語対応が十分に進んでいない一方で、タイプBに分類される名称・案内・誘導・位置を示すサイン群では、比較的多言語対応が進められていることが明らかとなった。
溝越誠也
埼玉県の高等学校校歌の歌詞分析
学校生活で誰もが知っていて歌の中でもっとも身近であるとも言える「校歌」について調査と分析を行った。対象は埼玉県の高等学校の校歌とした。150年以上の歴史がある校歌の特徴や時代別の変化などを埼玉県の高等学校の歌詞をWeb茶まめを用いて形態素による分析を行った。校歌の歌詞を対象に頻出語・環境語・文語・人称代名詞・字種・語種において分析を行い、それぞれで制定年ごとに「戦前・1947~50年代・1960年代・1970年代・1980年代・1990年代以降」と6つの区分と校種別に公立高校/私立高校、普通高校/総合高校、共学/女子校/男子校の3つの区分に分けて調査した。
その結果、校歌は校歌の始まりである和歌や唱歌の影響がまだ残っていることが分かった。特に文語は全体の7割以上の学校で使われていた。また、字種や語種において、共学・男子校・女子校での比較では性差も見られた。