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第6章 飲食チェーン店の言語使用―銀座と池袋を比べて―

6.2.喫茶店における個別分析とその考察(楠井愛美)

調査店舗はスターバックス(銀座松屋通り店・池袋西口店)、プロント(銀座並木通り店・南池袋店)、ドトール(銀座マロニエ通り店・メトロポリタン通り店)、タリーズ(銀座六丁目昭和通り店・サンシャインシティアルパ店)、サンマルクカフェ(銀座マロニエ通り店・池袋東口店)、ベローチェ(銀座二丁目店・南池袋二丁目店)、ルノアール(西銀座店・池袋北口駅前店)の計14店舗。

表1. 店外臨時的掲示物に使われている言語(数字は臨時的掲示物の数)

日のみ ほぼ日 ほぼ英 英のみ 日+英
スタバ 1 1 2
1 1
プロント 2 1 1 4
2 2 1 5
ドトール 1 3 4
1 3 4
タリーズ 1 1 2 4
1 1 2 4
サンマルク 2 1 3
2 1 3
ベローチェ 2 3 5
2 3 5
ルノアール 1 3 4
6 2 8

表2. 店内の言語の使われ方

レジ上メニュー 卓上メニュー ショーケース 下げ台 トイレ 喫煙禁煙 その他
スタバ 日+英 日+英 日+英 日+英
プロント ほぼ日+英 ほぼ日+英 日+英 なし
英+日
ドトール なし
営業時間の変更:日
タリーズ ほぼ日+英 日+英日※ 日+英 日+英
サンマ 日+英 日+英+ピ
日+ピ 英+ピ 日+ピ
ベロ 日+英 日+英 日+英 なし
日+英
ルノ なし なし なし

ピ=ピクトグラム
※飲み物・見出し:日+英 カスタム・食べ物:日

表1の店外臨時的掲示物、表2の店内メニュー等共に、銀座か池袋かという場所の違いによる使用言語の違いはほぼ見られず、また、韓国語や中国語はどこにも見られなかった。このことから、日本語に慣れていない外国人観光客を焦点を当てるよりも、日本人や日本語に慣れ親しんだ人に焦点を当てていると考えられる。また、喫茶店はメニューそのものに英語が使われている場合が多く、食べ物は実物を見て選ぶ形式が多いため、日本語がわからなくとも注文しやすい。場所の違いよりも、チェーン店ごとの使用言語の差が顕著に見られた。今回調査した7店は、メニューや掲示物に英語を併記することの多い(英語併記型とする)スタバ、プロント、ベローチェ、タリーズと、日本語のみを使用することの多い(日本語単独型とする)ドトール、サンマルク、ルノアールに大きく二分することができる。本社所在地がアメリカであるチェーン店のみが英語併記型というわけではない。また、価格帯によって使用言語に違いがみられるかとも考えたが、価格帯は様々であった。しかし、これらの二つのタイプでは店の雰囲気が異なり、各チェーン店の方針があらわれている。英語併記型のチェーン店は外国のカフェの形式や文化、雰囲気を目指すところが多く、日本語単独型はくつろぎ、身近さを意識しているところが多い。チェーンの喫茶店は、店のコンセプトやターゲットとする客層により使用言語の違いが出ると考えられる。

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