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第6章 飲食チェーン店の言語使用―銀座と池袋を比べて―

6.3.ファストフードにおける個別分析とその考察(亀尾久瑠美)

今回調査対象となったのはマクドナルド銀座アイタワー店・池袋北口店、リンガーハット銀座店・西池袋店、ケンタッキーフライドチキン銀座INZ店・池袋西口店、モスバーガー西銀座店・東武池袋店、吉野家銀座三丁目店・池袋北口店である。

マクドナルドは、銀座も池袋も看板のロゴはホームページに載っている典型的なものであった。臨時的掲示物のメニュー表はすべて写真が添付されていて、日本人にも外国人にも商品の情報がよくわかるようになっていた。池袋店の外観で特徴的だったのは、24時間営業のポスターが「24h OPEN」と英語表示になっていたことだ。銀座店にはそのような表示は見られなかった。池袋店の店内に入ってみるとレジの案内や座席案内、喫煙・禁煙の席を明記するポスターなどが二カ国表示であった。銀座店はそのような案内板もすくなく、二カ国表示も見られなかった。このようにマクドナルドにおいては池袋の方が外国人向けの工夫がなされていた。調査した当日の客層を見ても池袋のほうが外国人の客が極端に多く、銀座や池袋の町の雰囲気にあわせた表示方法というよりは町のニーズにあわせた案内表示であると考える。

リンガーハットは、外観に違いが見られた。銀座店は黒と木の色を基調とした落ち着いた雰囲気の看板となっており、さらに「Ringer Hut」と帯のように表示があるのに対し、池袋店は赤が基本で目立っていて、店名の英語表示はなかった。この外観は高級感ある銀座の町並みを意識し、ほかの店舗との差別化をはかっているといえる。よってこの店名の英語表示は実用的な使われ方というよりは装飾で用いられていると考えられる。銀座店と池袋店の共通点としては、店内に外国人専用のメニューがあることを知らせるポスターがあるということだ。それぞれの地域の店内に入ってみると、日本語のメニューとは別に、英語・中国語繁体字・韓国語で書かれたメニューがおいてあった。また、両店舗とも中国人のかたが働いており、外国人客に英語や中国語で対応している姿も見られた。このように、リンガーハットではそれぞれの町の雰囲気を生かした外観にし、店内では外国人にも対応できるように4カ国語で案内できるようになっていた。

図1. リンガーハット池袋店

図1. リンガーハット池袋店

図2. リンガーハット銀座店

図2. リンガーハット銀座店

図3. 外国人対応用メニュー(日・英・中簡・韓)

図3. 外国人対応用メニュー(日・英・中簡・韓)

以上五種類のファストフード店を調査したが、銀座と池袋とのはっきりした差が出ることはなかった。しかし銀座の高級感漂う雰囲気を尊重した外観でファストフードもグレードアップしたイメージを持たせる店と、マクドナルドなど有名なロゴで日本人も外国人も引きつけ、外国語表示で外国人も快適に利用できることを考えた店と、店舗ごとに差がでていた。

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