国文学科3年 布川 奈月
『伝統的方言語彙の使用度の違いを年代差でみる』
三川町で使われている伝統方言の使用率の違いを年代差で比べ、その違いをみていく。また、外住歴など要素も加えて伝統方言の使用実態を明らかにする。調査語彙には東北大学HPより、失われていく方言を取り入れ、伝統方言は本当に失われつつあるのかをみていく。
〈アンケート調査・設問Ⅲ〉
アンケートに回答していただいた全177人分のデータを調査対象とする。
調査語彙は「アゲママ(赤飯)」「デドコ(台所)」「バンゲ(夜)」「ユキノゲ(雪かき)」の全4語である。このうち「アゲママ」「デドコ」「バンゲ」は東北大学方言研究センターの『消滅する方言語彙の緊急調査研究』より各地で消えゆく方言として載っていたものを抜粋し、三川方言で調査したものである。
図1 三川町の方言語形使用率の違い(数字は%)
今回の調査では、伝統方言の使用のちがいを年代差でみることを目的とし、消えゆく方言を主に取り扱ったが、意外にも「セキハン」以外の方言はまだまだ使われているようである。
「セキハン」は普段の生活の中で滅多に使う言葉でもないため、方言語形に触れる機会が少なく、使用率が極めて低くなっているものと思われる。対して「デドコ」「バンゲ」「ユキノゲ」は生活に密着した言葉であり、特に雪国特有の「雪かき」では方言語形の使用率が極めて高い。特に若年層の使用率が他2語と比べて倍近くあるのがわかる。「デドコ」「バンゲ」は消えゆく方言リストから拾ってきたものなのに対して、「ユキノゲ」はそうではないため、このような結果になったものと思われる。「アゲママ」は高年層の使用率も低く、若年層の使用がまったくないため、あと10年もすれば完全に消滅してしまう危機にあるといっていいだろう。「デドコ」「バンゲ」にしても、高年層の使用率はいまだ高いものの、中年層・若年層といくにつれて使用率はどんどん下がっていき、若年層の使用率は高年層の約半分にまで減ってしまっている。アゲママに比べればまだ方言として残ってはいるが、3割弱とあまり高い使用率ではないため、こちらもひと世代後には消えてしまう可能性が高い。他と比べ圧倒的は使用率のある「ユキノゲ」も、高年層・中年層では約8割ある使用率が、若年層では6割にもみたなくなってしまっていることから、いずれは消滅危機の方言に加えられてしまう可能性がある。今回の調査では、特に若年層での方言使用率の低下が顕著にみられる結果となったといえるであろう。
参考文献
東北大学方言研究センター(消滅する方言語彙の緊急調査研究)
http://www.sal.tohoku.ac.jp/hougen/k_kinkyu.html 2011年1月11日12時03分アクセス