三川町の方言調査 ふるさとのことば

親族名称

三川町で使用されている親族名称について

国文学科3年 森山 未季子

1.はじめに

山形県三川町において親族名称の使用に変化がみられるか、実施した面接調査を元に年代差の観点から分析する。本報告は、「おとうさん」の呼称について「本人に直接呼びかける場合」を設定し、分析する。また、調査対象は現在の呼び方ではなく、子供のころの呼び方に限定した。

2.調査項目

使用した項目:面接 Ⅳ‐1 P13
「家庭の中で本人に対して、「おとうさん」と呼びかける場合、子供のころどのように呼びかけましたか?カードに書いてある言葉の中から選んでください。この中にない場合は、どのように読んでいたか具体的に教えてください。」*カードは以下

<カード>おとうさんの場合
1.オット
2.ダダチャ
3.ダンボ
4.トド
5.オトウサン
6.本人の名前で呼ぶ
7.その他
8.いない

3.分析対象データ

三川町外住歴が15歳まで無い者(純粋三川人<16歳以降も外住歴なし>28人+準三川人<16歳以降は外住歴あり>36人)計64人(欠損値0)を分析対象とした。


表1 対象データの内訳



*今回の調査では、子供の時の呼び方を聞いているので、15歳まで三川町住者だった純粋三川人、準三川人の区別はしないこととした。 *複数回答があったものに関しては、調査の際に特に指示あればそれを優先し、それ以外は 1、方言形→2、標準語形→3、名前→4、愛称 の順に優先順位を決めて回答を1つに絞った。

4.報告

「おとうさん」の年層別グラフは以下の通り。(□内の数字は回答された実数)


図1 おとうさんに直接話しかける場合


直接本人に呼び掛ける場合の名称を分析する。「ダダ類(ダダ・ダダチャ・ダダア)」「オトウチャン類(オトウチャン・トウチャン)」「オトウサン類(オトウサン・トウサン)」「オトウサン」「オット」「トッチャ」「オトウ」「オトサン」の回答があった。図1より、『みかわの方言』に載っていた、三川町方言とされる「オット」の使用率と「トド」は全年層で使用されていなかった。 「その他」と回答があったもののうち、「ダダ類」は高年層の使用率が高く、中年層、若年層では急激に数値が低下していた。このことから、「ダダ類」は現在使われなくなる傾向にある方言名称であることがいえる。
中年層にのみ見受けられた名称は、「オトサン」と「トッチャ類」があった。また、「オトウチャン」は、高年層、若年層は大きな差がないが、中年層だけで多く使用されていた。「トッチャ類」は、『東北方言辞典』に村山地方の方言と記述があり、三川町が含まれる庄内地方以外の地域の言葉が使われていたことになる。これは、家族内に他地方出身者がいる場合などが理由として考えられる。
若年層では、共通語形の「オトウサン」が使用率60%を超えており、残りは「オット」「オトウ」「オトウチャン」の回答のみであった。これらから、現在の若年層では共通語形を主に使い、方言は使われなくなっていると言える。

5.引用文献一覧

佐藤武夫『みかわの方言』
森下喜一(1987)『標準語引 東北地方方言辞典』桜楓社

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