三川町の方言調査 ふるさとのことば

語彙2

気づかない方言について

国文学科2年 宇田川 隆之介

1.はじめに

今回の調査は山形県三川町において使われている方言が、方言と気づかれずに使われているものがあるのではないか、という仮説のもとおこなった。その中で、三川町の方言である「オボケル」「ガオル」を調査言語の対象とし、それぞれのことばの方言意識を調べた。
今回はこのうち「ガオル」(弱る・困る)について考察してみた。

2.調査項目

「ガオル」について三川町の調査対象者に、
(1)『その言葉を使うか』という質問に対し
 {1、言う} {2、聞くが言わない} {3、言わない} の回答を設定

(2)『その言葉を方言と思うか』という質問に対し
 {1、思う} {2、思わない} {3、分からない} という回答を設定

(3)『その言葉はどこの方言だと思うか』という質問に対し
 {1、三川町まで} {2、山形県全域まで} {3、東北地方全域まで} {4、分からない}
 という回答を設定した

3.分析対象データ

面接調査者総数80人



このうち、 15歳までの言語形成期に三川町外住歴がなく、16歳以上にも外住歴のない人を
「純粋三川人」
15歳までの言語形成期に三川町外住歴がなく、16歳以上に外住歴のある人を
「準三川人」とし、
今回の調査分析では、この「純粋三川人」28人と「準三川人」36人を対象とした。
→純粋三川人の方は、準三川人の方と比べ、より多くの割合で「ガオル」を実際に使用していた。準三川人の方は、「ガオル」を聞いたことがない人もいたが、純粋三川人にはいなかった。

3.分析と考察

質問(1).弱ることや困ることをガオルといいますか?(人数)


質問(2).ガオルを方言だと思いますか?(人数)


→純粋三川人の方はすべての人が「ガオル」を方言だと認識していたが、準三川人の方は、「ガオル」を方言と認識していない方がみられた。これは外住先でもガオルが使用されていたためだと考えられる。

質問(3)ガオルはどこの方言ですか?(人数)

→「純粋三川人」の方は、「ガオルを庄内地方の方言であると調査対象者のほとんどが認識しているのに比べ、「準三川人」の方は、「ガオルを山形全域までの方言、東北地方までであると答えている人が見受けられ、やはり外住歴のある人は三川町以外の地域でも「ガオルが使用されていると認識する経緯があったことが想像される。

*ガオル以外に同じ意味の言葉で他の言い方はありますか?(人数)

→*「ガオル」以外に他に同じ意味の言葉で他の言い方は「純粋三川人」の方も「準三川人」の方も“ある”と答えた方がほとんどであったが、「純粋三川人」の方にだけ、“ない”の回答がみられた。三川町では、外住歴の有無に関わらず、「弱る・困る」の意味でガオル以外の言葉を使用する割合はほとんど変わらないことが分かる

3.結論

三川町で方言と気づかないで使用されている言葉があるのではないか、ということで調査した「ガオル」という方言は、予想に反してほとんどの調査対象者の方は方言であると認識して使用していた。しかし三川町外外住歴の有無を方言認識に組み合わせることにより、外住歴のある人は「ガオル」が三川町以外の方言でもあり、山形全域、東北地方でも使用されているのでは、という認識を持っていることが分かり、逆説的に新たに方言意識が発見できた結果となった。

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