三川町の方言調査 ふるさとのことば

語彙1

「やばつい」の使用について

国文学科3年 斉木 春香

1.はじめに

今回、佐藤亮一先生担当部分の面接調査19ページより、「やばつイ」という語の使用について分析した。山形県三川町での「やばつイ」の意味を決定、使用状況を明らかにすることが目的である。

2.調査項目

以下の選択肢はすべて【1、言う 2、言わない】

④朝早く山道を歩いていて、冷たい朝露が足にあたったときに、「やばつイ」と言いますか。
⑤道を歩いているときに、水をまいている人の冷たい水が足にかかりました。
 そんなときに「やばつイ」と言いますか。
⑥雨の日に道を歩いていたら、自動車が泥水をとばして少しなまあたたかい泥水が足にかかりました。
 そんなときに「やばつイ」と言いますか。
⑦暑い日に汗をかいたので、下着が汗でぬれて、べとべとになってしまいました。
 そんなときに「やばつイ」といいますか。
⑧干してあったシャツを着たら、まだ生乾きで湿っていました。
 そんなときに「やばつイ」と言いますか。
⑨雨の日に歩いていたら、靴に穴があいていたので、靴下が濡れてしまいました。
 そんなときに「やばつイ」と言いますか。
⑩風呂に入ろうと思って風呂に手を入れてみたら、かなり暑かったので、思わず手をひっこめました。
 そんなときに「やばつイ」と言いますか。
⑪夏に靴をはいて歩いていたら、足の指に汗をかいて靴下がぬれてしまいました。
 そんなときに「やばつイ」といいますか。
⑫毎日、雨が降り続いているとします。
 そんなとき、「毎日、やばつイ天気つづくのー」と言いますか。
⑬何日も風呂に入らず、きたない格好をしている不潔な人がいるとします。
 その人のことを話題にして「あいつは、やばつイ奴だ」と言いますか。
⑭友達の部屋に入ってみたら、部屋中が散らかっていました。
 そんなとき、「ずいぶん、やばつイ部屋だのー」と言いますか。
⑮町内会などで寄付を頼んでも、なかなか払おうとしないけちな人がいるとします、
 その人のことを話題にして、「あいつは、やばつイ奴だ」と言いますか。
⑯小さな子供が大声を出して走り回るので、うるさくてたまりません。
 そのようなとき、「やばつイ。静かにしろ」と言いますか。

3.データ概要

①15歳までに外住歴がなく、15歳以上にも外住歴のない方(37人)
②15歳までに外住歴がないが、15歳以上に外住歴のある方(27人)
の計64人を対象としている。

3.報告

以下は④~⑯の意味で「やばつイ」と「言う」か「言わない」か、答えた人の割合を示したものである。


「言う」の占める割合の高いもの(グラフ上⑤~⑪)に共通する意味を抜き出してみると、
液体がかかる…④⑤⑥
冷たい…④⑤⑨
湿る…⑦⑧⑪
体外から液体が触れる…④⑤⑥⑨
体内からの液体で衣服等が濡れる…⑪⑦
となる。⑥で「生温かい泥水がかかる」は「言う」の回答数が高く、⑩での「熱湯に触れる」では「言わない」の回答数が高いことから、「冷たい」というより「熱くない」液体という定義ができる。「体内からの液 体で衣服等が濡れる」に関しては、他の項目よりも「言う」の回答数が少ないことから、あまり主流な意味ではないと考えられる。
また、⑤⑨④⑥の四つの意味は2で触れた「意図せず」の意味を含んでいる。
よって、三川町での「やばつイ」は、原則として「体外から意図せず熱くない液体が触れる、その液体によって湿る」という意味でつかわれているといえる。

ページトップへ