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第9章 東京ユビキタス計画からみた銀座

9.2.ユビキタスの観光性

(小林和史)

ココシル銀座は2つの今までに見られない形態を有している。ピクトグラムを利用していないという点とデパートのフロアをばらばらのものとして表示する点である。
まずフロアをバラバラに紹介している点であるが、これはココシル銀座がデパートという商業施設を観光の対象と同時に買い物の場として両立させようとしているからではないか。まずデパート自体を観光の対象とするために以下のような説明を載せる。

図1 ココシル銀座の店舗の歴史にまつわる情報の例

図2 デパート紹介文言語別比

その上でフロアをバラバラに紹介し、どの階にどのような品物があるかを分かるようにさせ、デパート内の○○を買いに行かせるのではなく、○○のようなものがほしいのでデパートの何階に行けば買うことができるという図式を作り、ほかの情報媒体には機能としてばらばらの検索を有しているのではないか。
また、この検索機能がココシル銀座にピクトグラムの掲載がない理由でもある。フロアガイド・マップにおけるピクトグラムは銀座を観光している人のためのものとしての利便性が欠けている。パンフレットを持っていてトイレの場所が分かっていても、そのデパートまで遠ければ意味がなく、デパートのフロアガイド掲載場所まで行くにも遠ければ意味がないからだ。しかし、ココシル銀座は銀座を包括した観光マップであるためトイレと検索すればGPS情報に合わせて最寄りのトイレを紹介してくれる。その検索に引っかかる為にも各デパートのトイレをピクトグラムでなく文字であらわしているのだろう。また、ココシル銀座は手持ちのAndroid/iPhoneの言語に自動で対応するため、分からない言語のなかでピクトグラムを探し、なにがどこにあるかを確認する必要が無い。このように今まで対応できなかったニーズにココシル銀座は対応している。

まとめ
ココシル銀座が新たな観光情報媒体たろうとしていることが分かったが、観光客の情報入手手段としてアプリケーションはまだまだ浸透していない。

図3 アンケート調査「日本滞在中に得た旅行情報で役に立ったもの」回答

訪日外国人の消費動向平成24年7-9月期 報告書より
出典:日本政府観光局(JNTO)

一方観光客の層も変化を迎えており、2012年9月の日本政府の尖閣諸島国有化以来、日本における中国人観光客数は減少した。

図4 2012年1月から11月の間に日本を訪れた中国人観光客数の推移

出典:日本政府観光局(JNTO)

中国人観光ツアーが多く訪れていた銀座にとってこの減少は痛手である。ただ、そんな中でもココシル銀座は新たなイベントに対して対応していた。一つ一つのイベントに合わせて利用者層の拡大を狙い、利用者ニーズにも対応させていく。それを銀座商店街とがっちり組んで行うココシル銀座には今の銀座の刻一刻と変わる状況への順応性が見て取れる。観光客の変化・減少に瞬時に反応し対応することは紙媒体では難しく、商店街の協力なしにはできない。その点を解決するのがココシル銀座である。観光客ニーズへの対応で進化させることも可能であり、時期に合わせた情報を届けることも出来る。銀座も観光地として有名ではあるが、その地位を保ち続けるには難しい時代となっている。そんななかでココシル銀座と連携することにより銀座の今を伝え、観光客に今まで以上の満足と利便性を提供していこうとしているのではないだろうか。

9.3.ユビキタスとバリアフリー、IMF(国際通貨基金)の関連性(石毛良汰)