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第9章 東京ユビキタス計画からみた銀座

9.3.ユビキタスとバリアフリー、IMF(国際通貨基金)の関連性

(石毛良汰)

・2012年10月現在、ココシル銀座において調査対象としたデパートでバリアフリーの記載があるのは三越(日本語のみ)と和光であった。三越は日本語のみ、和光は日本語と英語での表記がされていたが、韓国語と中国語(簡体・繁体共に)はバリアフリーの表記は見られなかった。

調査報告
ユビキタスにはバリアフリーの表記がかなり少ないように見受けられる。現段階のユビキタスは試験的運用であるために、バリアフリーの情報まで掲載する必要がないのではないだろうか。中国を例にとって考えたとき、地方と都市の発展の差が激しく、法律の整備もまだまだ進んでいないため、バリアフリー化にはあまり手を出せていないのが現状のようである。このように国のレベルからバリアフリーの考えが乏しく、広く世の中に普及していないことがバリアフリーに関する優先順位が低いことにつながっているのではないだろうか。そのために今回の表記でも日本語と英語にとどまっているのではないかと考える。

図5 中国のバリアフリー

中国ヘンテコ百科事典(2008)

手すりやスロープなどお金のかからないものが中心で画像のような金銭的負担の大きい設備はかなり少ない。
また、ユビキタスにバリアフリーを掲載したもう一つの理由としてあげられるのが2012年に銀座で開催されたIMF(国際通貨基金)世界銀行年次総会である。第16回東京都ICタグ実証実験(2012)の資料中に「IMF会議において紹介し、多言語の観光案内により外国人利用者の拡大を図る」と明記されている。このことからバリアフリーの先進国である欧州、アメリカの国々へ向けてのアピールのために掲載したことが考えられる。バリアフリーの情報を見ることができれば障害があったとしてもあらかじめ行けるか行くことができないかの判断をすることができ、便利でもある。

まとめ
ユビキタスような電子ツールにバリアフリーの情報が付加され、広まることによって体に障害を持っている人々でも安心して観光できるようなことをアピールし、観光客を増やす試みなのではないかと考えられる。

9.4.全体のまとめとして

今の銀座はユビキタス計画の実験の場になることによって東京都の目指すべき形を投影される町となっている。そのために銀座は2つの空間、すなわち現実の銀座とバーチャルな銀座の両方を持ち得、後者によって速度を持った対応が可能になっている。またその早さは観光客のニーズへの対応の早さだけでなく、現実の銀座が持つ出来事に対応したいという現実の銀座のニーズに対応する早さでもある。しかし、今や未来の情報に対応しようとするあまり既成の情報に関しては手が加えられず、機能が優先されているので、その点から見ると東京都の望む形としては未完成な銀座なのであろう。

出典・参考文献
日本政府観光局(2012)
訪日外国人消費動向調査「平成24年7月~9月期」報告書
日本政府観光局 2012年10月25日(2013年1月6日)

日本政府観光局(2012)
訪日外客の動向 国籍/月別 訪日外客数(2003年~2012年)
日本政府観光局 2012年12月20日(2013年1月6日)

東京都ICタグ実証実験実行委員会(2012)
「東京ユビキタス計画・銀座」スマートフォンを活用した実証実験の拡充について
東京都ICタグ実証実験実行委員会 2012年10月4日(2013年1月6日)

参考サイト
国土交通省 「バリアフリー」
国際通貨基金世界銀行年次総会 2012

9.2.ユビキタスの観光性(小林和史)