0311123 大谷早希
《調査定義》
どこのデパートでも必ず放送される閉店前の館内放送を、録音機器を用いて調査する。
《データ概要》
中央通り:松屋銀座、松坂屋銀座店
晴海通り:阪急MEN‘S TOKYO、ルミネ有楽町店、銀座和光(本館)、銀座三越
以上の6店舗で放送される館内放送を対象とし、録音をとる。
表1 各デパートの使用言語の種類と順番
銀座和光は閉店の合図のチャイムのみだったため、その他に区分した。
今回の結果と、田中ゆかり編(2005)、田中ゆかり編(2012)の基礎演習の調査と、田中・秋山・上倉(2007)の研究論文を比べてみる。(表2)
表2 店内放送で使われる言語の変遷
阪急MEN‘S TOKYOは、2011年から営業しており、2005年度と2007年度の調査ではその前身である有楽町阪急を比較対象とみなした。ルミネ有楽町店は2010年までは、西武有楽町店が営業していたため、2007年度と2005年度の調査での西武有楽町店を比較対象とした。なお、2005年度では松屋銀座・銀座和光、2007年度では銀座和光のデータがなかったため、―で表した。
過去の調査と比べると、中国語を増やしたデパートが3店舗ある。特に松坂屋銀座店は、昨年度は日本語・英語・フランス語であったが、今回の調査では日本語・中国語という結果になった。このことから、松坂屋はヨーロッパ語圏よりもアジア圏、とりわけ中国からの観光客にターゲットを切り替えていることがわかる。
他の情報媒体であるパンフレットなどには韓国語が加わっているのだが、表2を見てみると、全く店内放送にはない。このことについて考えてみると、韓国では日本に先駆け、小学校からの英語教育を行っている。そのため、英語を理解できる人が多いと思われているのであろうから、わざわざ放送していないと考えられる。英語での放送は、そこそこ勉強していれば理解できる程度の簡単な単語ばかりだったため、英語の苦手な私でも理解できる放送だった。そのため、日本語・英語・中国語という3か国語に絞られていてもすっきりしていて、不便ではないと思った。
店内放送で使われる言語の変遷(表2)を見てみると、現在の銀座では使用言語の取捨選択が行われ、客層を絞った店内放送を行っていると感じた。外国人はアメリカや中国から来ている人だけではないが、世界共通で通じることのできる英語と、昨今の中心的購買層である中国人観光客に対応していれば対応できるはずなので、問題ないのだろう。
引用文献リスト
田中ゆかり編(2005)「首都圏デパートにおける多言語サービスの現状調査報告」(最終閲覧日 2013年1月15日)
田中ゆかり・秋山智美・上倉牧子(2007)「東京圏の言語的多様性-東京圏デパート言語景観調査から-」『社会言語科学』10-1(社会言語科学会)pp.5-17
田中ゆかり編(2012)「第5章 店内放送からみた銀座のデパート」
『銀座の言語景観―2011年度基礎演習2報告書―』(日本大学文理学部国文学科)pp.30-33(最終閲覧日 2013年1月15日)