田中ゆかり
このサイトは、2015年度前期集中で開講した基礎演習2の授業成果報告です。日本随一の繁華街である「銀座」をフィールドに、言語景観と言語サービスの実態を把握し、その背景を読み解こうとしたものです。
銀座の「今」を追う言語景観・言語サービス調査は、今回で5回目となりました。
日本漢字能力検定協会による「今年の漢字」は「安」(http://www.kanken.or.jp/kanji2015/)。「安保」「不安」「安心」などの「安」ということですが、インバウンド景気を支える「円安」の年とみることもできる1年でした。2015年のユーキャン新語・流行語年間大賞のひとつには、インバウンド景気に支えられる日本経済を象徴する「爆買い」が選ばれました(http://singo.jiyu.co.jp/)。そのような年であった今年度の報告は、どのようなテーマで迫ったものも結果としては、訪日外客に関連するトピックが前景化したように思います。
2章ではファストファッション店における表示とサービスに、3章では言語に拠らないピクトグラムに着目しました。コンビニという全国どこの街角にも同じような佇まいで存在するかのように思われる業態においても、訪日外客目当ての表示・サービスが大きな特徴として見出されました(4章)。近年の売り上げの多くを訪日外客に依存するデパート業界は、次々に新しい言語表示・言語サービスを繰り出しています(5章)。ホテルも同様ですが、価格帯によってかなり異なる対応をしていることも分かりました(7章、8章)。「和」の売り出し方に注目した6章、和食に注目が集まる中で蕎麦店をチェーン店と個人経営店で比較したもの(9章)などは、ユニークな切り口で銀座の今に迫りました。ハラル対応、タイ語・アラビア語の導入が、今年の報告から読み取れる新しい動向かもしれません。
受講者は、教室を飛び出し、銀座に繰り出すことによって、このような「変化」を肌で感じることができたのではないかと思います。このクラスの活動を通じて、それぞれ言語から現代社会を読み解くひとつの訓練ともなったのではないでしょうか。
本サイトに掲載したレポートは拙いところもあると思いますが、どれも日本語社会「今」を映し出すものとなっていると思いますので、ご一読いただけると幸いです。
このクラスは連絡、情報の共有、活動の経過報告などさまざまな局面においてBlackboardを活用しました。この管理や授業補助に、国文学科助手の林直樹さんに多大なご協力を賜りました。林さんには、報告書ならびにweb報告書作成にも尽力をしていただきました。改めて、お礼申し上げます。
なお、本報告書は、学科の実験実習費の補助を受けたものです。