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第9章 銀座の蕎麦屋における言語景観

0311144 鶴賀彰太郎
0314112 岡本健太郎

9.1.調査概要

銀座に存在する蕎麦店を、チェーン店と非チェーン・個人経営店に分類し店頭の言語景観を調査した。

チェーン蕎麦店に関しては、グーグルマップで検索が可能であり銀座駅付近で系列が被らないチェーン店を10店選出した。また、系列の重複を避けるため、築地近辺の店舗も調査対象とした。

非チェーン・個人経営蕎麦店に関しては、銀座駅から800m以内にある食べログ順位の高い店舗を選出した。

9.2.データ概要

チェーン蕎麦店については以下のリストの通りである。

No店名住所
1小諸そば 歌舞伎店中央区銀座4丁目4-11-7第二上原ビル
2よもだそば 銀座店中央区銀座4丁目3-2銀座白亜ビル1F
3木屋フーズ 木屋チェーン銀座7丁目店中央区銀座7丁目7-7-11
4高田屋 東銀座昭和通り店中央区銀座3丁目10-6
5せんねんそば 銀座四丁目店中央区銀座4丁目3-5松輪ビル
6そば 俺のだし GINZA5中央区銀座5丁目1 銀座ファイブB1
7吉そば 銀座店中央区銀座3丁目9-2
8ゆで太郎 築地2丁目店中央区築地2丁目7-12 山京ビル1F
9土風炉 銀座コリドー街店中央区銀座8丁目2-2
10名代 富士そば 歌舞伎座前店中央区銀座4-12-17 銀座石川ビル1F

表1.チェーン蕎麦店一覧

非チェーン・個人経営蕎麦店については以下のリストと分布図の通りである。

No食べログ順位店名住所
11成冨中央区銀座8-18-6二葉ビル 1階
22布恒更科中央区築地2丁目15-20-109
33そばきりや山形田中央区銀座3-8-15APA銀座中央ビルB1
44手打そば 木挽町・湯津上屋中央区銀座1-22-14
56銀座 蕎麦 流石 本店中央区銀座2-13-6東二ビル 2F
67明月庵 ぎんざ 田中屋 銀座本店中央区銀座6-6-19
78そばよし 京橋店中央区京橋2-6-18
810歌舞伎そば中央区銀座4-12-2 歌舞伎座裏
913松玄 凛中央区銀座7-8-7 GINZAGREEN 4F
1020泰明庵中央区銀座6-3-14

表2.非チェーン・個人経営蕎麦店一覧・食べログ順位一覧

9.3 比較の観点

調査は以下の観点から行った。

  • ・看板のフォントと言語選択状況
  • ・店頭メニューの他言語対応状況
  • ・その他の案内における他言語案内状況

9.4.調査結果

No看板の外国語表記店頭メニューの外国語表記その他の案内
1ローマ字食品サンプル(日本語)
2メニューなし
3英語(英文)食品サンプル(日本語)
4英語(英文)・繁体字・簡体字・韓国語
5英語(英文)・繁体字・韓国語
6
7ローマ字
8食品サンプル(日本語)
9ローマ字英語(英文)・繁体字
10英語(英文)食券の買い方説明(英語)

表1.チェーン店他言語対応一覧表

No看板の表記言語店頭メニューの表記言語その他の案内の表記言語
1日本語メニューなし案内なし
2日本語日本語商い中(日本語)
3日本語メニューなし紹介雑誌スクラップ(日本語)
4日本語メニューなし小メモ(日本語)
5日本語日本語本日の蕎麦産地紹介(日本語)
6日本語日本語オススメランチ看板(日本語)
7日本語日本語紹介雑誌スクラップ(日本語)
8日本語日本語営業時間の案内(日本語)
9日本語・ローマ字日本語案内なし
10日本語メニューなし案内なし

表2.非チェーン・個人経営店他言語対応一覧表

調査の結果、看板においてはチェーン店/非チェーン店を問わず、一部店舗に置いてローマ字表記が存在するのみで、ほぼ全ての店舗が日本語表記のみとなった。また、多くの店舗で楷書体や行書体、草書体といった筆文字が用いられていた。これは「そば」という日本食をあえて強く「和」を感じさせるフォントで表記することで、そばという和食のイメージをどの店舗形態でも大切にしているからではないかと考えられる。

店頭メニューの他言語対応状況については、チェーン店/非チェーン店で対応の差がはっきりと別れる結果となった。チェーン店の中でも外国人観光客の来店を想定している店舗では、英語を中心として最大で5言語もの多言語対応が見られた一方で、チェーン店の中でも5店舗では、日本語表記のみの対応となった。
非チェーン店舗については、調査対象の10店舗中10店舗で他言語対応を行っておらず、他言語対応がまったく進んでいないことがわかった。
では何故このように対応が分かれたのだろうか。我々はその理由は3つあると考えた。

1つ目の理由は、店舗のブランドイメージ戦略によるものという理由だ。非チェーン店舗のなかでも、価格帯の高い店舗では店頭メニューそのものを設置しない店舗が見られた。
また、他言語対応を行っている店舗がチェーン店に限られていることから、他言語対応により日本語以外の文字を店頭の言語景観に加えることが、蕎麦店としての「和」「高級和食」といったブランドイメージを損ねるという考えがあるのだろう。

2つ目の理由は、コストパフォーマンスの差という点だ。最近では、外国人観光客が蕎麦店に訪れるというニュースを目にするようになったが、中でも富士そばを代表とするチェーン店への来店が多くをしめる。多くの外国人観光客が訪れるチェーン店では、他言語対応のメニューを多くのコストをかけてでも設置する価値があるのだろう。一方で、絶対的な来店客数がチェーン店よりも少なくなる非チェーン店では、外国人観光客に向けた他言語対応のメニューをわざわざ作ってもそれを目に留める観光客はチェーン店と比べ少なくなるのである。

3つ目の理由は、客層の違いによるものだ。歌舞伎座に隣接して存在する「富士そば 歌舞伎座前店」では多くの外国人観光客の来店が見込める。外国人観光客のなかで、富士そばは安価で蕎麦と丼ものが食べられる店として有名であり、歌舞伎を鑑賞した後に安価で和食を体験できる店として需要があるからだ。一方で、銀座から少し離れてオフィス街に入ると客層の多くが近くのオフィスで働くサラリーマン達となる。この客層の違いが、チェーン店同士であっても、このようにはっきりとした対応の差を生んでいるのではないだろうか。

9.5.参考資料

iza イザ ニュースまとめ 「サラリーマンの“聖地”に外国人殺到、お目当てのメニューは…」
http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/150318/lif15031812030008-n1.html
最終閲覧日:2015年9月23日

東京外国人百景 「東京にいるユニークな外国人を取材することで見えて来る東京の魅力とは?」
http://s.mxtv.jp/morning_cross/hyakkei.php?date=201508
最終閲覧日:2015年9月23日

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