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第4章 料理店のジャンルごとの言語景観の違い

4.3.中華料理店における言語景観(川浪楓)

4.3.1.調査概要

中華料理店以下5店舗を、メイン看板、サブ看板、サブ看板2、外メニュー、外メニュー2、のぼり、張り紙、パンフレット、臨時的掲示物、臨時的掲示物2、臨時的掲示物3、ウェブサイトの観点に基づき、どのような言語表記がされているのかを調査し、また、なぜそのような言語表記になっているかを考察する。

4.3.2.調査結果

楼蘭麒麟全聚徳沁馥園赤坂璃宮観点があった店舗の合計
メイン看板なし中(併音)営業せず日、ローマ字3
サブ看板英、日、中(併音)日、ローマ字日→ローマ字5
サブ看板2なしなしなし2
外メニュー日→英営業せず4
外メニュー2(左)日:ランチセットの案内(右)英:四つのメニューの案内 営業せずなし日→英3
のぼりなしなし営業せずなしなし0
張り紙日:季節のおすすめメニューなし営業せずなしなし1
パンフレット中(繁)、日、ハングルそれぞれ:デパート発行なし営業せず日(店名と総料理長の名前にローマ字、肩書に英)日(店名と総料理長の名前にローマ字)3
臨時的掲示物1日→英→中(簡)→中(繁)→ハングル:満席の案内日:忘年会の案内日:休業案内なし日:コース料理の案内4
臨時的掲示物2日:おせちの案内なしなし日:赤坂璃宮の特集を組んだ雑誌3
臨時的掲示物3なしなしなしなし日→英:銀座厳選ランチメニュー1
ウェブサイト日、英、中(簡)、中(繁)、ハングルそれぞれ日(目次に英)日(目次に英)日(目次に英)日、英それぞれ5

中華では、「予算が高い」店舗の昇順に言語表記が充実しているのかと予想していたが、あくまでも店舗ごとに言語表記の特色が表れているといえる。条件が同じであるにもかかわらず、これは意外な結果だった。ゆえに、看板などの文章の少ないものと、メニューのような文章の多いもので使われている言語が違うと言う予測において、一概にそうであるとはいえず、それよりも、単純にデザインとして多言語表記しているケースや、「多言語対応している」というアピールのほうが見受けられた。また、伝えたい内容によって言語表記を使い分けているといえる。それは、忘年会の案内や、お節料理の案内から読み取れる。おそらく、日本人になじみ深いものなので、日本人向けの表記がされていると予想した。言語表記が盛んだった楼蘭で、季節のおすすめメニューが日本語で書かれていたことは、旬も日本の文化だからと予想される。また、中華であるので、中国語(繁体字)、中国語(簡体字)が多いのかと予想していたが、「インバウンド統計リポート:日本経済新聞」をみても分かるように、中国人よりも欧米諸国の外国人のほうが、食にかける費用が高いので、今回の調査店舗が高級店だったということもあって、英語をデザインとして、あるいは表記言語として採用していたのではないかと思った。

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