フランス料理店5店舗の言語景観を、主にメイン看板、サブ看板、外メニューの調査項目を設定し、どのような言語が使われているかを調査する。
表1 調査店舗と使用言語
表2 調査項目と使用言語
調査したフランス料理店の中で最も使われている言語は日本語であり、英語やフランス語は日本語ほどは使われていなかった。また、調査項目の中で、メイン看板、サブ看板、外メニューの順で使用言語数が多くなっているということが明らかになった。
フランス料理店の中で最も使われている言語は日本語であることは、日本語が実用性を志向したサービスだからだと言える。なぜなら、最も消費をしているのは日本人客であると考えられるので、店が売り上げを考え客の理解できる言語に対応しているからだと考えられるからだ。
しかし、実用性が低いフランス語(フランス語話者の訪日客の消費額はほかの言語に比べ低いので実用性を志向したとは考えづらい)をそれでも使っているのは、実用性以外のメリットがあるからだと考えられる。
調査項目を見てみると、メイン看板、サブ看板、外メニューの順で使用言語数が多い。これは、情報がたくさん書かれるものほど使用言語数も多くなっていると言える。また、外メニューでは全てで日本語表記されていた。このことを考えるうえで、庄司博史(2013)で示されている次の見解を引用する。
「特定の外国人、外国語話者への情報提供を目的としたものではなく、日本人向けの多言語表記とみなされるものはどうでしょうか。企業の国際性や商品、サービスの高級性あるいは原産地性の象徴として外国語を象徴として用いる場合に見られますが、外国語自体や本国のイメージ、ステータスと大きくかかわっているといえます」
この説に則って考えれば、訪日フランス語話者の消費額が少ないにも関わらず、フランス料理店で主にメイン看板にフランス語表記が多用されている理由は、消費者にフランスやフランス料理の高級でおしゃれなイメージ、つまり「サービスの高級性あるいは原産地性の象徴」を想起させるために使われているのではないだろうか。