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第2章 銀座のアンテナショップにおける言語景観

2.4.臨時的掲示における言語景観(村上裕美・高橋満里奈)

2.4.1.調査概要

店舗の正面入り口付近にある臨時的掲示を撮影し、対象店舗別と掲示種別の2つの観点から調査した。掲示種別の調査では、臨時的掲示を主にポスターなどの掲示物・立て看板・POP・のぼり・置物の5つに分類した。ここでは特徴が大きく見られた店舗別の調査結果を中心に紹介する。

2.4.2.調査結果

店舗別の調査では、全店舗で2言語以上の表記が見られた。その中でも特に特徴があった岩手県・群馬県のアンテナショップについて考察した。

図1 いわて銀河プラザ掲示物

図2 ぐんまちゃん家掲示物

図1は岩手県のアンテナショップにある県の紹介ポスターであり、同じ内容が9種類の言語で書かれていた。これほど多くの言語を使って書かれているものは調査した他のショップでも極めて特殊で、岩手県が他県に比べて多言語化を進めていることがわかる。この理由として、世界遺産の存在と、県全体で行っている「岩手多文化共生プラン」により「岩手県外国語案内表示統一ガイドライン〈観光用語編〉」が制定されたことで、県内だけでなくアンテナショップにも多言語化が進められていると考える。岩手県は橋野鉄工山という世界遺産を通して外国人観光客が増加したため、多言語化を進めたと考えられる。

図2は群馬県のアンテナショップのウェルカムポスターであり、3言語が使用されていた。群馬県も岩手県と同様に、多言語化に積極的な様子が見られ、特に中国語表記が目立った。ここにも、世界遺産の存在が大きな影響を及ぼしていると考えられる。群馬県の世界遺産である富岡製糸場は香港や台湾からの観光客が多いことから、英語よりも中国語を多く採用しているのだろう。

このように、特に多言語化を進めていたショップは世界遺産やご当地キャラクターなどで世界的に注目されている県が多かった。しかし、掲示種別調査ではあまり特徴が見られなかったことや、店舗別調査では特徴のある県とそうでない県ではっきり分かれてしまったから、対外意識は県によってまだ差異があるといえる。

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