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第7章 海外に向けた"和"の発信の違い

7.5.デパートにおける和菓子店(羽根田恵美)

7.5.1.銀座松屋と銀座三越の比較

調査対象にあげたデパート内の店舗における言語表記について調査した。専門店と異なり店舗入口の掲示がないため、主に商品付近にある商品説明の掲示、商品名や値段が書かれたラベル、ポップを調査対象とした。結果三越・松屋デパート内20店舗中日本語表記以外がある店舗は以下の2店舗であった。2店舗ともに商品名でこのような表記が見られた。その他の表記はローマ字が使用されていた。

表7.デパート内店舗における言語表記(有:1 無:0)

店舗 掲示媒体 その他 合計
まめや金澤萬久 ラベル 1 1 0 0 0 0 2
清月堂本店 ラベル 1 0 0 0 0 1 2

7.5.2.デパート内店舗と専門店の比較

今回調査対象としてあげた店舗のうちデパート内店舗と専門店で重複した店舗が3店舗あった。そこでデパートと専門店ではどのような違いがみられるのか比較し、それぞれの特徴や工夫について考察する。ここでは違いが顕著に出た「宗家源吉兆庵」を対象とする。

「宗家源吉兆庵」は三越店舗では外国語表記はなく、商品名や商品説明の掲示も日本語だけあり、掲示媒体もラベルのみと少なかった。一方、専門店では商品名はローマ字、商品説明においては英語・中国語(繁体字)で表記され、掲示媒体も商品付近のラベルだけでなく見やすいように大きく掲示されているものもあった。

表8.「宗家源吉兆庵」における言語表記(有:1 無:0)

場所 掲示媒体 その他 合計
デパート(図7) ラベル 1 0 0 0 0 0 1
専門店(図8) ラベル 1 1 1 0 0 1 4
専門店(図9) 看板 1 1 1 0 0 0 3

図3.デパートラベル 

図4.専門店ラベル

図5.専門店看板

デパートでの外国語表記が少ない理由は2つあると考える。

1つ目に挙げられることは外国人観光客対応の充実である。松屋銀座の1階案内所では外国人観光客の接客面対策や、外国語フェイスブックページを開設するといった情報発信の充実に力をいれている。また中国の旧正月にあたる2月には対応を強化するなどの対策も取っている。このような対策により多くの外国人観光客がサービスを受けられるので店舗での表記が少なくても対応できているのだと思う。

2つ目にデパートならではの特徴が関係していると私は考える。食品をはじめ、衣類・雑貨・日用品まで揃うデパートでは、事前に決めた商品だけを購入するだけでなく立ち寄った先で惹かれたものをつい購入してしまうということも少なくない。だからこそ露店では見られなかった試食サービスを商品近くに設置したりすることで興味を持ってもらう事ができるのではないかと思った。

7.5.3.海外への和菓子の広がり

デパート内店舗と専門店を調査する中で共通して感じたことは海外における和菓子の知度の高さである。そもそも和菓子は戦後の混乱期であった1950年ごろからハワイ・ブラジルを中心に海外に伝わった。当時サンパウロでは20件ほどの和菓子店があったという。しかし1970年代に高度経済成長期に突入し和菓子職人が日本に戻ったためその後海外には普及しなかった。そして2000年代に入り老舗の和菓子店が海外に店舗を増やしたことによりまた和菓子が海外でも食べられるようになり、近年では洋菓子よりもヘルシーであるのに、見た目が美しく美味しいと評判になり認知も高くなっている。現在では今回の調査対象にもある「宗家源吉兆庵」ではニューヨーク・ロンドン・シンガポール・台湾・台北に、「とらや」ではフランスに海外店舗を展開している。また「とらや」では空港にも出店しており、より多くの外国人韓国客に対応できるような工夫がなされている。「宗家源吉兆庵」の海外店舗では初めて和菓子を見たお客様のために素材の詳しい説明書きを用意したり、日本の伝統や歳時記を紹介するといった工夫がなされている。

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