0318029 中尾清香
コスメ売場において臨時的掲示物がどの様な形で施されているかを調査・比較検討し銀座における言語景観への理解を深める。なお、調査対象は銀座・有楽町エリアにおける後掲の19施設内に出店するコスメブランドのうち「資生堂(SHISEIDO)」に限定する。
① コスメ売場の有無
② 資生堂商品の有無
③ 臨時的掲示物の有無(広告・商品紹介・価格札を含む)
④ 臨時的掲示物における使用言語と使用言語数
⑤ 店舗の属性による差
以下の表1・表2は前掲のアイテムから得た調査結果をデータ化したものであり、前者が①・②・③を後者が④の内容を含む。なお表2においては臨時的掲示が確認できた店舗に限り集計を行った。
表1.調査項目と収集データ数
施設名 | 施設の種類 | コスメ売場 の有無 |
資生堂商品 の有無 |
臨時的掲示物 の有無 |
|
1 | EXITMELSA | 複合商業施設 | ◯ | ◯ | ◯ |
2 | GINZA SIX | 複合商業施設 | ◯ | ◯ | ◯ |
3 | NISHIGINZA (西銀座) | 複合商業施設 | ー | ー | ー |
4 | ギンザ・ グラッセ | 複合商業施設 | ー | ◯ | 未調査 (サロン&スパの為) |
5 | 銀座三越 | 百貨店 | ◯ | ◯ | ◯ |
6 | バーニーズニューヨーク銀座店 | 複合商業施設 | ◯ | ー | ー |
7 | 阪急メンズ東京 | 百貨店 | ー | ー | ー |
8 | 松屋 | 百貨店 | ◯ | ◯ | ◯ |
9 | マロニエゲート銀座1 | 百貨店 | ◯ | ◯ | ◯ |
10 | マロニエゲート銀座2&3 | 百貨店 | ◯ | ◯ | ◯ |
11 | メルサ銀座二丁目店 | 複合商業施設 | ー | ー | ー |
12 | ルミネ有楽町店 | 複合商業施設 | ◯ | ◯ | ◯ |
13 | 和光 | 商業施設 | ◯ | ー | ー |
14 | 銀座コア | 複合商業施設 | ◯ | ー | ー |
15 | 銀座ベルビア館 | 複合商業施設 | ー | ー | ー |
16 | 東急プラザ銀座 | 複合商業施設 | ◯ | ◯ | ◯ |
17 | 有楽町マルイ | 複合商業施設 | ◯ | ◯ | ◯ |
18 | 有楽町イトシア | 複合商業施設 | ◯ | ー | ー |
19 | 有楽町マリオン | 複合商業施設 | ー | ー | ー |
総計 | 13 | 10 | 9 |
表2.アイテム1の使用言語と使用言語数
ID | 施設名 | 日 | 英 | 中 (簡) |
中 (繁) |
韓 | 使用 言語数 |
1 | EXITMELSA | ◯ | ◯ | ◯ | ー | ー | 3 |
2 | GINZA SIX | ◯ | ◯ | ー | ー | ー | 2 |
3 | NISHIGINZA (西銀座) | ||||||
4 | ギンザ・ グラッセ | ||||||
5 | 銀座三越 | ◯ | ◯ | ◯ | ー | ー | 3 |
6 | バーニーズニューヨーク銀座店 | ||||||
7 | 阪急メンズ東京 | ||||||
8 | 松屋 | ◯ | ◯ | ー | ー | ー | 2 |
9 | マロニエゲート銀座1 | ◯ | ー | ー | ー | ー | 1 |
10 | マロニエゲート銀座2&3 | ◯ | ー | ◯ | ー | ー | 2 |
11 | メルサ銀座二丁目店 | ||||||
12 | ルミネ有楽町店 | ◯ | ー | ー | ー | ー | 1 |
13 | 和光 | ||||||
14 | 銀座コア | ||||||
15 | 銀座ベルビア館 | ||||||
16 | 東急プラザ銀座 | ◯ | ◯ | ◯ | ー | ◯ | 4 |
17 | 有楽町マルイ | ◯ | ◯ | ー | ー | ー | 2 |
18 | 有楽町イトシア | ||||||
19 | 有楽町マリオン | ||||||
各言語使用数 | 9 | 6 | 4 | 0 | 1 |
・施設の種類による差異は見受けられない。
・19施設のうち13施設にコスメ売場が設けられているが、資生堂の商品を取り扱っている店舗は僅か9店舗のみであった。しかし9店舗のうち全ての資生堂関連商品に臨時的掲示物が設けられている。
全ての店舗の臨時掲示物に日本語が、次いで世界共通語の英語が複数の店舗で使用され、全体のおよそ2分の1の割合で中国語(簡)が使用されている一方で、韓国語は僅か一店舗、中国語(繁)に至っては何れの店舗にも見受けられない。
・近隣国である中国と韓国の日本における言語表記の差はどこから生じるのか。
・中国人観光客と韓国人観光客の日本におけるニーズの差異を日本政府観光局のデータを引用し考察へ導く。なお使用するデータは一律に2017年度のものとする。
観光局監修の「日本の観光統計データ」によるとによると2017年12月時点の訪日外客数の総数は2,020,648人に登り、その内韓国が678,900人と最も多く、次いで中国が564,300人とあり、各国の動員数のみを比較してみると、日本の言語表記において韓国語が圧倒的に少ない事実と反比例する。しかし後掲の【図1】に示した2か国の費目別の1人当たりの旅行消費額を参照すると、その内実が見えてくる。韓国人観光客の買い物代」が19.414円であるのに対し中国人観光客の買い物代は121,453円にも登り、全体の半数以上を占めている。また旅行消費額の合計が韓国人観光客は68,499円であるのに対し中国人観光客は3倍である224,258円にも及ぶ。以上の事から化粧品会社を含め、多くの販売会社は消費量の多い中国をメインターゲットとして据えるのではなかろうか。このように考えると、日本の言語表示における各国の差異も頷ける。
図1.
2017年 費目別の1人当たりの旅行消費額(購入者単位・円)
今回の分析では日本の言語表示における各国の差異を主に韓国と中国の側面から行った。結果から、日本のメーカー企業は訪日外交人観光客のなかでも特に消費率の高い中国人観光客をメインターゲットとしていることが分かった。しかし増加する「爆買いしない中国人」が昨今の問題としてしばしば議題にあげられるが、今後の日本企業の対応と。付随する言語景観の変化が気になるところである。
また、今回の分析では一部の地域や言語に限った調査を行ったが、次回はより広範囲で国際的な立場から研究を行いたい。
日本政府観光局「各国・地域別の内訳」「1人あたりの旅行費出」
https://statistics.jnto.go.jp/
i マロニエゲート銀座1の調査報告書においては価格札を臨時的掲示物として扱わない方針をとるが、本報告書では価格札及び商品説明の記載も臨時的掲示物の一環として捉えることとする。