0315147 長場宣樹
調査対象の店舗における店内放送で使用されている言語を調べて、そこから見える言語景観や言語サービスについて分析する。
①調査対象の施設で放送されたものをアイテムとして定義する。
②アイテムごとに収集したデータ数がわかるように表や図を作成したものを以下に載せている。
表1.施設ごとの店内放送
施設名 | 放送内容 | 使用言語 | 話者の性別 | 横計 |
EXITMELSA | エスカレーターに乗る際の注意 | 日本語、英語、中国語、韓国語 | 女性 | 8 |
GINZA SIX | オリジナルBGM | 1 | ||
NISHIGINZA (西銀座) | エスカレーターに乗る際の注意 | 日本語、英語、中国語 | 女性 | 7 |
ギンザ・ グラッセ | 無し | 0 | ||
銀座三越 | 彩り祭という秋のイベントの説明 | 日本語、英語、中国語 | 女性 | 7 |
銀座三越 | エスカレーターに乗る際の注意 | 日本語、英語、中国語 | 女性 | 7 |
バーニーズニューヨーク銀座店 | 無し | 0 | ||
阪急メンズ東京 | ベビーカーや車いすなどの利用者への注意 | 日本語、英語、中国語 | 女性 | 8 |
松屋 | 営業時間について | 日本語、英語、中国語 | 女性 | 7 |
マロニエゲート銀座1 | 東急ハンズの宣伝 | 日本語 | 女性 | 5 |
マロニエゲート銀座1 | エスカレーターに乗る際の注意 | 日本語、英語 | 女性 | 6 |
マロニエゲート銀座2&3 | おしゃれな洋楽BGM | 英語 | 2 | |
マロニエゲート銀座2&3 | エスカレーターに乗る際の注意 | 日本語、英語 | 3 | |
メルサ銀座二丁目店 | 夏物セールの案内 | 日本語 | 女性 | 6 |
ルミネ有楽町店 | ルミネカードの案内 | 日本語、中国語 | 女性 | 6 |
ルミネ有楽町店 | 内容不明 | 日本語 | 女性 | 4 |
和光 | 未確認、BGMあり | 1 | ||
銀座コア | エスカレーターに乗る際の注意 | 日本語 | 女性 | 6 |
銀座ベルビア館 | 無し | 0 | ||
東急プラザ銀座 | レストランの案内 | 日本語、英語 | 女性 | 6 |
東急プラザ銀座 | 店内の案内 | 日本語、英語、中国語 | 女性 | 7 |
有楽町マルイ | セールやイベントの案内 | 日本語、英語、中国語 | 女性 | 7 |
有楽町マルイ | エレベーターに乗る際の注意 | 日本語、英語、中国語 | 女性 | 6 |
有楽町イトシア | 未確認 | 0 | ||
有楽町マリオン | 無し | 0 | ||
縦計 | 20 | 41 | 16 |
表1では施設ごとの店内放送の中で、内容、使用言語、話者の性別が記載されたものである。
③今回の調査では放送で使用された言語、そしてそれがどのような内容のものであったかに着目した。
表1の使用言語に注目して、今回の調査で確認できた店内放送で使用された言語の総数は41あった。そこから言語ごとに分けると以下の図1のような結果になった。
図1.使用言語別の割合
図1では日本語と英語が多く使われていた。それに次いで中国語が多いことがわかる。次に紹介するのは過去10年分の訪日中国人の年別の推移をもとに作成したグラフを示したものである(1)。
図2.過去10年の訪日中国人の推移
図2から2010年前後では訪日中国人の数が増えたり減ったりしているものの、2014年以降からは年々増え続けていることがわかる。このことから近年増え続けている訪日中国人に配慮した結果として、店内放送において日本語や英語だけでなく中国語も多く使用されているのではないかと考えられる。
対象となった施設の放送内容について、表1を見てみると1番多く放送されているのはエスカレーターやエレベーターに乗る際の注意を促しているものが多いことがわかった。ここでもエスカレーターやエレベーターに乗る際の注意の放送でどの言語がどれだけ使用されているか以下の図に示した。
図3.エスカレーター、エレベータに乗る際の注意
このように図1と同じように主に日本語、英語、中国語の順で使用されていることがわかる。そして以下にもう1つ図を示した。
図4.店内サービスの案内
この図は前の図で対象としたエスカレーターやエレベーターに乗る際の注意以外の放送内容の中で店内サービスに関する放送で使用された言語を示したものである。ここでいう店内サービスとは、表1の放送内容の中で種類が違っていてもセールやイベント、店舗で使えるカードなど店舗内で受けられるものは全て店内サービスとして定義したものとする。
図4でもやはり日本語、英語に続いて中国語が使われているという結果になっている。しかし、図1や図3でふれなかったが今回の店内放送では僅かながら韓国語が使われていることがわかる。訪日中国人の数が年々増えているが、韓国も中国に近いほど年々訪日者数の数が増えているのである(1)。店内サービスに関する放送は人によって利用するものとしないものがあると考えられるが、エスカレーターやエレベーターなどほとんどの人が訪れた際に利用するものの注意放送でなぜ韓国語があまり使われていないのだろうか。この疑問を分析するにあった以下にグラフを示した。
図5.中国と韓国の目的別訪日数の推移
このグラフは中国と韓国の訪日外国人を国ごとに目的別で分けた調査をもとに作成したものである(2)。対象となった施設は百貨店や複合商業施設であるため買い物を目的とした人であることをふまえると、このグラフから2015年までは韓国の人が中国より買い物を目的とした人が多く訪日しているが、2016年以降になると逆転して中国の人の方が韓国の人より買い物を目的として訪日する人が多いことがわかった。この結果を見て、買い物を目的とした中国人が増えてきていることを意識したことで、使用言語がこのような割合になったのではないか。
店内放送はそこを訪れれば多くの人が耳にするものであるが、聞く機会があるからこそどの言語が使われているのか知ることで訪日外国人に対する意識がわかった。今回の調査では日本語の他に英語や中国語、韓国語といった言語が使用されていてどの国も年々来日してくる数が増え続けている。来年には東京オリンピックがあり、その中で日本側もそれらの国の言語にどうやって対応していくべきなのか、考え続けていかなければならないのではないかと改めて認識する機会を得ることができたと思う。
※最終閲覧日はいずれも2019年9月6日
JTB総合研究所
https://www.tourism.jp/tourism-database/stats/inbound/
日本政府観光局
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/index.html