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第8章 臨時的掲示時計売場の報告と分析

0318044 横山蒼紫

8.1.目的

腕時計が販売されている売り場にて使用されている言語を調査する。

8.2.調査概要

8.2.1.調査項目

SEIKO(セイコー)とSITIZEN(シチズン)製の腕時計の説明書き(値札、割引表示を含む)
腕時計の広告

8.2.2.各施設での時計売り場および調査項目の有無

表1参照。

表1.各施設での調査項目の有無

ID 施設名 売り場 説明書き 広告 備考
1 EXITMELSA セイコー製品、免税店内の売り場
2 GINZA SIX セイコー製品
5 銀座三越 セイコー、シチズン製品共にあり
8 松屋 セイコー、シチズン製品共にあり
12 ルミネ有楽町店 セイコー製品
13 和光 セイコー製品
16 東急プラザ銀座 セイコー、シチズン製品共にあり
17 有楽町マルイ セイコー、シチズン製品共にあり

8.2.3.調査観点

説明書きに使用されている言語の種類と数
広告に使用されている言語の種類と数

8.3.説明書きに使用されている言語の種類と数の報告・分析

表2.時計の説明書きに使用されている言語
ID 施設名 中(簡) 中(繁) その他1 使用
言語数
(横計)
ピクトグラム 備考
1 EXITMELSA 2 割引表示
5 銀座三越 1
8 松屋 2
12 ルミネ有楽町店 1
13 和光 2 「Limited
Edition」
のみ
16 東急プラザ銀座 3 ラッピング
の案内
17 有楽町マルイ 1 割引表示
各言語使用数
(縦計)
6 4 2 0 0 0 12 0

図1.各施設の時計売り場での使用言語数

ここでは、全体的に使用言語が少なかったため、中国語(簡体字)に対応しているかどうかでその印象が変わってしまう。世界での評価も高い日本の時計売り場では、もう少しさまざまな言語に対応している様子が見られると思っていたので、意外だった。

そんな中で、東急プラザ銀座はここでは最も多い3つの言語に対応しており、時計売り場以外でも多言語に対応している様子が見られた。2016年に開業していて比較的新しい施設であることや、地下2階から地上11階までの大規模な店舗を構えていることから、近年の訪日外国人客の増加(図2)に対応しより多くの顧客をターゲットにしているものと思われる。しかし、同じくほかの売り場などでは多言語に対応していた松屋が、時計売り場では中国語すら使用していないというのは疑問が残った。

図2.インバウンド統計リポート:日本経済新聞より

表2や図1では、老舗店である和光も日本語、英語の2言語に対応していることになっているが、表2の備考欄にもある通り、英語での表記は、固有名詞(ブランド名など)や「Limited Edition(限定品)」というものに限られていた。これらは必要最低限のものであり、実際には、外国人客には主に店員が会話で対応している様子が見られた。高級老舗店ならではの落ち着いた雰囲気を守るために、言語の表示を極力排しているものと思われる。そもそも、高級店には店自体にブランドがあり、幅広い客層に開かれている必要がないため、もしくはそれを演出するためということも言えるかもしれない。

日本語表記しかなかった銀座三越、有楽町マルイ、ルミネ有楽町のうち、銀座三越では時計売り場を含む免税店がワンフロア分別にあり(8階)、主な外国人客対応はそこでなされているはずので、今回調査した2階の時計店では主に日本人をターゲットにしていると推測できる。したがって日本語のみの表記も納得できる。しかし、有楽町マルイとルミネ有楽町は、比較的最近に改装されている(マルイ2017年改装、ルミネ2013年改装)にもかかわらず、日本語のみの表記が採用されているのには疑問が残る。マルイの時計店は最上階の8階にあり、ルミネの時計店も9階建ての施設の7階にある。両施設とも上のほうの階にあるが、三越の外国人向けの免税店が8階にあるのを考えると、それを理由にマルイとルミネが日本人をターゲットにした施設だとするのにはいささか無理があるように感じる。

8.4.時計の広告に使用された言語の種類と数報告・分析

表3.時計の広告に使用されている言語

ID 施設名 中(簡) 中(繁) その他1 使用言語数(横計)
2 GINZA SIX 2

表3にある通り、腕時計の広告はGINZA SIXでしか見られず、使用言語は日本語と英語しか見られなかった。

写真1.GINZA SIXのセイコーの時計の広告

写真1の広告を見ると、右下に確かに英語表記がなされている。しかしとても小さく書かれており、外国人にもわかるようにはしてあるが、親切なものではない。メインはあくまで日本人で、外国人は副次的なものであることがうかがえる。

広告に関しては、もう少しデータが集まっていれば商品を宣伝する広告に現れる言語から、どのような客層(外国人)をターゲットにしているかを如実に把握することができたはずなので、データが集まらなかったのは残念だが仕方ない。

8.5.まとめ

今回銀座の商業施設・複合商業施設・百貨店で調査した時計売り場での言語景観だが、データの絶対数が少ないため断定することはできないが、最初に感じたことは多言語への対応にはまだまだ余地が残されているのではないかということだった。爆買いや転売ヤーなど話題を呼ぶ中国人訪日客の増加が報道されたりしているのをよく聞く割には、中国語の対応をしていたところは多いとは言えない数である。確かに中国から近い地方などのほうが中国人観光客の来訪は多いのかもしれないが、東京は首都でもそれと同等かそれ以上の対応がなされていてもよいのではないかと感じた。

調査を行ってみてなかなか思ったようにデータが集まらず苦しいところもあった。だがデータが充実していたら案外楽しいものであるように思う。いろいろな傾向やさまざまな目的が透けて見えてくると調査も面白いものだろうなと感じた。

マニュアル作成では調査項目をうまく絞り込むことができなかった。時計売り場での表記もそれぞれなので、なるべく多くの場所で共通する項目を考えるのが難しかった。

8.6.引用サイト

※最終閲覧日は2019年9月6日

インバウンド統計リポート:日本経済新聞 
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/inbound-report/

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